実は店員待機、万引きリスク…ファミマ・1千店「無人レジ店舗」の全貌と誤解

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ファミリーマートの店舗

 店舗数で業界2位のファミリーマートが、無人レジを使ったコンビニエンスストアを2024年度末までに全国に1000店舗展開する。本格的な無人レジ店舗の展開は日本で初めて。ターゲットはマイクロマーケットだという。

 人口減少や新型コロナウイルス感染拡大による外国人労働者の大量帰国などで日本国内の需要は大幅に減少し、コンビニの国内店舗展開は6万店を前に増加の速度が鈍化しているが、「これまで通常店舗として出店できなかったような場所でも出店することができる」(ファミリーマート広報担当者)と新しい可能性を語る。約3000アイテムを販売する標準的店舗(一般的には50~60坪、165~200平方メートル程度といわれている)での無人レジの展開はまだ考えていないという。

 ファミリーマートが無人レジの展開に乗り出したのは2020年夏ごろだ。「無人レジ」システムの開発に成功した「TOUCH TO GO」(TTG、本社:東京都港区)との協議を始め、同11月には業務提携に持ち込んだ。TTGは日本最大の鉄道会社、JR東日本グループとITベンチャー企業、サインポスト(本社:東京中央区)が19年7月に無人レジの事業化を進めるために設立した合弁企業だ。

 サインポストは07年3月に設立されたベンチャー企業で、ウォークスルー型の無人決済システム(無人レジのこと)「スーパーワンダーレジ」の開発に成功した。棚の重量センサーと天井に取り付けられたカメラなどの情報から入店した客と手に取った商品をリアルタイムに認識して、決済エリアに客が立つとタッチパネルに商品と購入金額を表示。客が商品を持ったら、出口でタッチパネルの表示内容を確認して支払いをするだけで買い物ができるという仕組みだ。

人員削減効果

 サインポストは17年4月、「JR東日本スタートアッププログラム」に応募し最終選考11社のなかに残り、JR東日本グループとの共創がスタート。東京都赤羽や埼玉県大宮のJR駅内に無人レジの店舗を設立して実証実験を行い、19年7月1日、両社は合弁会社TTGを設立した。そしてTTGは20年3月23日、JR東日本が山手線沿線に49年ぶりに新設した「高輪ゲートウエイ駅」内に常設の無人AI決済店舗「TOUCH TO GO」をオープンした。

 その後こうした実績を踏まえ、ファミリーマートが提携。21 年2月にはTTGと資本提携を結び、3月に東京駅近くに無人レジ店舗「ファミマ!!サピアタワー/S店」をオープンした。広さは55平方メートルの小型店。店内には菓子や飲料など約700アイテムの商品が並び、それを48台のカメラで管理する。

 1階に設置したのは、ビルだけでなく直結する東京駅から流れてくる客を期待してのことだ。店内は無人だが、バックヤードには年齢確認の必要な酒類販売に対応する従業員が1人待機する。それでも通常2人必要な人員を1人減らすことができるという。

「報道などではよく無人店舗といわれますが、トラブルが起こった場合の対応のために1人バックヤードに待機しています。また、お客様がお酒を購入した場合は、バックヤードでブザーがなって店員に報告し、画面を通して対面による年齢確認を行います。たばこについては現在、監督官庁などと交渉しています」(ファミリーマート広報担当者)

 酒やたばこなどのライセンス商品は売上高の1割5分から2割を占めるため、それが売れるかどうかは収益に大きく作用するからだ。AIカメラなどの機材はレンタルするという。

「費用は機材をレンタルする方式で月50万円程度です。一人が6時から23時まで働くと一人80万円程度の人件費がかかるといわれており、大幅な人件費の削減になります」(TTG広報担当者)