亡命の中国人、19年時点で米CIAにコロナ拡大の危険性を伝達か…問題視されず

 連邦下院は23日、エコヘルス・アライアンスに連邦資金を提供することを禁じる法案を可決したが、遅すぎる措置といわざるを得ない。米情報機関であれば、NIHやDARPA関連資料を閲覧できたはずだが、大統領に提出した報告書にはこれらの内容は一切含まれていないと思う。「手抜き作業」と批判されてしかるべきだが、米情報機関にとって都合の悪い情報はこれだけではない。

 スカイニュース豪州版は20日、「米国に亡命した中国の人権活動家が2019年11月下旬に『中国で新しい危険なウイルスが広がっている』と米CIAなど情報機関関係者に伝えたが、彼らは大きな問題とはみなさなかった」と報じた。一国の政府がパンデミック情報を隠蔽するとは思わなかったのだろうが、米情報機関は01年の同時多発テロの前に重要な情報を入手しながら危機を未然に防ぐことができなかったという前科がある。

 中国はどうかというと、「米国責任論」のプロパガンダ活動に躍起になっている。中国科学院が9月22日に発表した研究結果によれば、「米国での新型コロナウイルス感染は19年9月前後に始まり、中国での感染は12月下旬に始まった」という。公開データを感染症の拡散モデルなどで解析した結果だとしているが、筆者のような素人が考えても「眉唾」以外の何ものでもない。

 新型コロナウイルスの起源解明をめぐる米中両国の迷走はいつまで続くのだろうか。

(文=藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー)

●藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー

1984年 通商産業省入省

1991年 ドイツ留学(JETRO研修生)

1996年 警察庁へ出向(岩手県警警務部長)

1998年 石油公団へ出向(備蓄計画課長、総務課長)

2003年 内閣官房へ出向(内閣情報調査室内閣参事官、内閣情報分析官)

2011年 公益財団法人世界平和研究所へ出向(主任研究員)

2016年 経済産業研究所上席研究員

2021年 現職