スズキはトヨタの“下請け”になるのか?トヨタのアフリカ進出の“先兵”に

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スズキ「ハスラー」(「Wikipedia」より)

 トヨタ自動車を中心とする商用車の技術開発提携である脱炭素連合に、スズキとダイハツ工業が加わることになった。大型トラックを製造するいすゞ自動車と日野自動車に、商用の軽自動車を扱うスズキとトヨタ子会社のダイハツが合流し、軽商用車でもコネクテッドカーや電動化、自動運転などCASEと呼ばれる次世代技術・サービスの開発に5社で取り組む。

 トヨタ、いすゞ、日野が4月に設立した共同出資会社「コマーシャル・ジャパン・パートナーシップ・テクノロジーズ(CJPT)」にスズキとダイハツが10%ずつ出資する。トヨタの保有分を譲り受ける。トヨタの出資分は80%から60%に下がる。いすゞと日野は各々10%のまま。トヨタ以外の4社の出資比率は横並びとなる。

 CJPTはトラックを中心に、商用車の技術開発を目的に設立された。軽のスズキとダイハツが加わることで、大型トラックから軽商用車まで、商用車のフルラインナップとなる。コネクテッドと安全技術、電動化の3点を重要領域として挙げている。コネクテッドでは「ラストワンマイル」(最終拠点からエンドユーザーへの物流サービス)を担う軽商用車までのデータ基盤を構築し、物流ルートの効率化につなげる。

 安全技術ではコストを抑えた先進安全技術を開発する。電動化では温暖化ガス排出量をゼロとする「カーボンニュートラル(CN)」に向けた技術協力を行い、ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)など電動化した軽自動車を開発する。

 スズキ、ダイハツのトップと一緒にオンラインで記者会見した豊田章男・トヨタ社長は「軽商用車は収益面だけを考えれば非常に厳しいと思うが、日本になくてはならない車」と指摘。「決まったルートを走る商用車とCASE技術は相性が良い」とし、「物流現場の課題を解決したい」と語った。

長年のライバルだったスズキとダイハツが手を握った理由

 長年ライバルだったスズキとダイハツが軽商用車のEVの技術開発で提携する。2021年3月期の軽商用車の国内シェアは、軽バンや軽トラックの「ハイゼット」を販売するダイハツが37%、軽バン「エブリィ」、軽トラ「キャリイ」を主力に持つスズキが30%と激しく競り合っている。

 ダイハツの奥平総一郎社長は「いまの価格を維持したまま二酸化炭素(CO2)の排出量を減らすのは並大抵のことではない」と軽商用車を電動化する難しさを力説した。

 軽自動車の主戦場である地方は人口減に歯止めがかからない。商用車は軽乗用車に比べ1台当たり20万から40万円も価格を抑えているうえに、あぜ道などで出力を高めることが必要で生産コストがかさむ。その一方で、世界的な脱炭素の機運もあって、電動化への対応は急務となっている。スズキとダイハツが組むのは、「お金のかかる部分」(奥平社長)の開発を分担することでコストを抑える狙いがある。

 大型トラックを使って運んだ荷物を一時的に都市近郊に集め、そこから軽商用車で客先まで運ぶなど、新たな需要が生まれるとの読みもある。

 軽商用EVは三菱自動車工業の「ミニキャブ・ミーブ」が稼働しているだけだ。日本郵便は東京を中心に1200台のミニキャブ・ミーブを導入し、脱炭素に向けて動き出した。宅配大手の佐川急便は中国製の軽商用EVバン7200台を導入すると発表している。ダイハツ、スズキにとって軽商用EVの商品化が喫緊の課題となっている。

 6月の株主総会で新社長に就任したダイハツの奥平氏の初仕事がライバルのスズキと商用軽EVで提携することだった。奥平氏はトヨタの専務役員からダイハツの社長に送り込まれた。