カリスマ経営者だった鈴木修会長が相談役に退いたスズキはどこに行くのか。「トヨタの先兵としてアフリカに行く」(外資系証券会社の自動車アナリスト)と予想されている。
トヨタはアフリカ事業を加速させている。昨年9月、小型車「トヨタ・スターレット」をアフリカで売り出した。アフリカでトヨタ車の販売を担うのがグループ商社の豊田通商。スズキがインドで生産している「バレーノ」のOEM(相手先ブランドによる生産)供給を受けた。価格は5人乗りで130万円からに抑えた。アフリカで手薄だった小型車を強化し、経済的に富んできたアフリカで増え続ける中間層を取り込む。
バレーノは小型車としては室内空間が広めに設計されており、高身長の人が多い地域でも乗りやすい。インドで高いシェアを持つスズキから供給を受けることで、価格を抑えることが可能だ。現在アフリカで販売する小型車の中心価格帯である200万円台を大幅に下回る価格で売れるのが強みだ。
21年中にスズキからSUV「ビターラブレッツァ」やセダン「シアズ」、ミニバン「エルティガ」のOEM供給を受け、トヨタ車としてアフリカ市場に投入することを計画している。スズキは22年から豊田通商のガーナ工場で「スイフト」を生産し、アフリカ市場に投入する。
スズキは19年にトヨタと資本提携した。スズキがトヨタから電動車技術の供給を受ける見返りに、トヨタはインドやアフリカ市場でスズキ車のOEM供給を受けるなど、協業の実を上げつつある。
豊田通商は「20年に97万台だったアフリカの新車市場が25年に約1.5倍の150万台に成長する」と試算している。脱炭素は世界的なテーマだが、アフリカでは充電インフラが普及しておらず、走行距離が短いEVを売り込むのは当面、難しい。HVは値段が高いというネックがある。「そこで、スズキから低価格のクルマの供給を受け、アフリカでトヨタブランドの浸透を図る」作戦だ。
スズキは近い将来、トヨタの「下請け」となるのだろうか。アフリカでの現状からも、そうした見方も広まっている。
(文=編集部)