少数株主を含めた株式の譲渡価格は計100億円程度だが、これにプリン社員らが保有するストックオプション(新株予約権)や、買収に伴うプレミアム(上乗せ幅)を加味すると取得総額は200億円超になると見られている。株式の譲渡は8月末までに実行する予定だ。
プリンは17年、みずほ銀行や伊藤忠商事などが共同出資して設立したスタートアップ企業である。手数料がかかる銀行口座間の送金とは異なり、銀行口座とひも付けたアカウントを通じて個人間送金や店での支払いが無料でできる。プリンのアプリはメガバンクなど50あまりの金融機関の口座と連携している。
企業向けにも注力し、約400社に経費精算サービスを提供。アプリ上で企業側から受け取ったお金は、QRコードを使った支払いにも利用できる。利用者数は数十万人程度と少ないが、グーグルはプリンの送金機能や金融機関との連携を評価して買収に踏み切ったとみられる。資金力、技術力のあるグーグルの参入でモバイル決済は大混戦。ZホールディングスとLINEが統合するなど、規模の大きさが優劣を左右するようになった。
メルカリは、これまで「巨大企業と正面切っての競争はしない」としてきた。フリマ市場というすき間で勝者となったメルカリが、モバイル決済という主戦場に参入したことで、逆に今度はメルカリが買収のターゲットになる、との分析もある。
グーグルがモバイル決済に参入すると、打撃を受けるのは楽天グループの楽天ペイとメルカリのメルペイとみられている。メルカリとメルペイは20年2月、NTTドコモと業務提携したが、今後、資本提携に発展し、メルカリがNTTドコモグループの傘下に入る日は近いとの観測も広まっている。
【主なスマホ決済サービス】
サービス名 事業者 登録者・会員数
〈世界〉
・Google Pay 米グーグル 1億5000万人
〈国内〉
・Pay Pay ZHD 4000万人
・Line Pay LINE 3900万人
・R Pay 楽天グループ 5000万人
・d払い NTTドコモ 3523万人
・au PAY KDDI 2630万人
・メルペイ メルカリ 1000万人
(文=編集部)