フリマアプリのメルカリが8月12日に発表した2021年6月期の連結決算は、新型コロナウイルス下の外出制限を機に利用が増え、最終損益は57億円の黒字(前の期は227億円の赤字)だった。18年の上場以来初の最終黒字となった。オンライン記者会見した山田進太郎社長は「在宅時間の増加で出品が増えたことが大きかった」と述べた。
売上高は前期比39%増の1061億円。主力の国内事業の売り上げが3割弱増えた。中高年の利用が増え、月間利用者数は12%増の1954万人にまで拡大した。国内の流通総額は7845億円と25%増加した。営業損益は51億円の黒字(前の期は193億円の赤字)。上半期(20年7~12月期)に広告宣伝費を抑制したことが利益を押し上げた。売上高販管費比率は72%と26ポイント低下した。
売り上げが大幅に伸びたのは、新型コロナウイルス下、日米でフリマ利用者が急増し、これまで手薄だった中高年層の需要を取り込んだからだ。特に60代以上の利用者が1年前から4割増え、最近は中高年層の増加率のほうが高いという。60代以上はフリマ出品数が月平均6個。20代の約2倍だという。高額品の取引が増えた結果、取引件数や金額を押し上げた。
携帯ショップやコンビニエンスストアなどと連携し、初めてフリマアプリを使う人向けに出品方法を指南する「メルカリ教室」を開いてきた。販促でも中高年の視聴が多いテレビ広告を強化し、需要の掘り起こしに力を入れた。広告や販売促進活動も見直した。既存の利用者から紹介を受けた人が初めて出品すると、両者にポイントを付与するキャンペーンを展開した。
最大の懸念だった米国のフリマ事業の収益も改善した。株式報酬と減価償却費を除いた調整後営業損益は3960万ドル(約43億円)の赤字で、前の期(1億390万ドルの赤字)から赤字額が縮小。流通総額は11.7億ドルと72%増えた。手数料の上乗せも寄与して収益構造が改善した。21年4~6月期は四半期として初の黒字となった。ただ、22年6月期の米国事業の成長目標は20%増とし、21年6月実績(72%増)から大幅に減速する見通しだ。
メルカリは18年6月、当時国内唯一のユニコーン企業(企業価値10億ドル、約1100億円以上の未上場企業)として株式を公開した。利用は増えたものの、広告宣伝費やキャッシュレス決済の消費者還元で出費がかさみ、年々、赤字幅が拡大。米国事業も伸び悩み、20年3月には株価が1500円台と上場直後の4分の1に落ち込んだ。金融など周辺サービスを強化して、ようやく利益が出やすい収益構造になった。収益の改善とともに株価は上昇し、21年2月には6400円と最高値を付けた。新興市場に上場している銘柄の株価が足踏みしていることもあってか、8月12日の高値は6180円だった。
フリマアプリは楽天グループが「ラクマ」、ヤフーが「ペイペイフリマ」を提供するが、取扱高は思ったほど伸びていない。国内では「メルカリ一強」が続く。
課題はフリマに続く事業の育成と米国事業の伸長だ。フリマアプリの市場開拓した先行者利益を生かし、キャッシュレス決済「メルペイ」に参入した。メルペイは20年1月、経営難に陥ったスマホ決済のOrigami(オリガミ)を丸ごと買収し、本格展開に乗り出した。
米グーグルが日本で送金・決済事業に本格参入する。スマートフォンの決済・送金のpring(プリン、東京・港区)を買収することを明らかにした。プリンの株主であるメタップス、ミロク情報サービス、日本瓦斯(ニチガス)がグーグルへの売却を正式に発表した。買収額は非公表だが、プリンの筆頭株主のフィンテック企業、メタップス(東証マザーズ上場)は約45%のプリン株の売却額が49億円だったと、情報を開示した。