家電量販店首位のヤマダホールディングス(HD)は傘下の大塚家具を9月1日付で完全子会社にする。株式交換の方式で大塚家具1株に対してヤマダ株0.58株を割り当てる。7月29日開催予定の大塚家具の定時株主総会での承認を得て、大塚家具は8月30日付でジャスダックを上場廃止になる。1980年6月に店頭登録後、40年以上、上場を続けてきた歴史に幕を下ろす。
完全子会社になるのに伴い、ヤマダデンキの店舗で大塚家具の商品の取り扱いを増やすほか、ヤマダによる大塚家具への経営資源の投入や財政面での支援を進める。新規出店の加速や既存店の改装、広告宣伝の強化などでも連携を深める。大塚家具は2019年12月、ヤマダデンキなどの持株会社ヤマダHDの傘下に入り、家具と家電の相乗効果による再建を目指した。ヤマダデンキの店舗での家具販売に加え、大塚家具の店舗で家電を販売した。
しかし、新型コロナウイルスでの外出自粛も重なり、高齢の顧客を中心に都市部の店舗から客足が遠のき、業績は回復しなかった。20年12月には創業家出身の大塚久美子社長が業績不振で引責辞任した。後任社長はヤマダHD社長で大塚家具の会長を務めていた三嶋恒夫氏が兼任した。
大塚家具の21年4月期の単独決算の売上高は277億円(20年4月期は348億円)、最終損益は23億円の赤字(同77億円の赤字)だった。20年4月期は決算期を12月から4月に変更したため単純比較はできないが、最終赤字は5期連続となった。
業績の不振が続く。18年1~6月期の決算短信から事業継続リスクのある企業として投資家に注意を促す「継続企業の前提に関する注記(ゴーイングコンサーン)」を記載していて、21年4月期も外れなかった。ヤマダはこれまでに数多くの家電量販店や住宅企業を傘下に収め、社名をヤマダに変えてきた。大塚家具の社名は残されていたが、完全子会社となれば、大塚家具の社名が「ヤマダ家具」に変わるかもしれない。
家電を軸に住宅などを強化しているヤマダは家具の品揃えの充実が必須で、有力家具メーカーの調達ルートをもつ大塚家具は、どうしても欲しい企業だった。
ニトリHDは6月11日、ニトリと島忠の初の複合型店店舗「ニトリホームズ宮原店」(さいたま市北区)をオープンした。島忠と大塚家具は共に、桐たんすの産地である埼玉県春日部市が創業の地。かつて、両社は家具売上高日本一を競った。ほぼ同時に大塚家具はヤマダ、島忠はニトリの傘下に組み込まれた。
大塚家具を完全子会社にすることを機に、ヤマダHDは家具や雑貨といった非家電の分野を強化する。新規出店する大型店で売り場の半分は非家電とする。既存店も増築の際に売り場構成を変え、3年以内に新業態の店舗を100~150店舗体制とする。
ヤマダHDは21年から年間30店の積極出店を考えており、このうち10店が売り場面積1万平方メートル以上の大型店となる。大型店のおよそ半分の売り場を家具や雑貨、日用品などの家電以外とする。
新業態の店舗名は「Tecc LIFE SELECT(テックライフセレクト)」。6月18日、熊本市内で既存店を改装して1号店を開店した。1階が駐車場とヤマダ不動産、2階が家具・インテリア用品・医薬品・日用品の売り場で、子会社の大塚家具のショップも出店。3階は家電と玩具を販売する。
ゲームやベッドなどを広いスペースに展示し、実際に使ってもらう体験型展示を実践する。家具とインテリアのコーディネート提案やオンラインでのカーテンについてのアドバイスのほか、スマートフォンをかざすと商品情報がわかる「Pタッチ」など各種サービスにも力を入れる。