大塚家具を買収、銀行業に進出…“ヤマダデンキ帝国”の野望 巨大総合小売りチェーンに変身

 現在、ヤマダHDの国内直営店は約1000店ある。新規出店のほか、増築・改築で今後3年でテックライフセレクトは全国で100~150店舗体制になる。他の店舗についても商圏ごとの需要を見極め、中古店「ヤマダアウトレット」やネット通販の倉庫機能を併せ持つ「ヤマダウェブコム店」に切り替える。

 ヤマダが中古店を最初に開いたのは15年。約50店を展開したが、今後は出店のペースを上げて2年で2倍の100店にする。ヤマダデンキ直営店に占める中古店の割合は1割超となる。冷蔵庫など大型家電の中古品を大々的に扱うのは珍しく、ヤマダの中古店への傾斜の成果が注目される。

 家具のレンタルも検討している。同時に家電の再生、再資源化や焼却処分までをグループ内で完結する体制を整える。循環型モデルで縮小傾向の家電市場を深堀りする。

家電と住宅ローン一体の銀行サービスに進出

 家電量販店業界は給付金による家電の買い替え需要や「巣ごもり需要」の恩恵を受け、冷蔵庫、洗濯機、テレビなどの大型家電が想定以上に売れた。ヤマダHDの21年3月期の連結決算は売上高が20年3月期比8.7倍の1兆7525億円、純利益は同2.1倍の517億円だった。

 22年3月期は給付金特需が消え去る。東京五輪・パラリンピックを家庭で観戦する人が増え、テレビやレコーダーの需要が増える期待はあるが給付金に比べれば小さい。売上高は1兆6860億円で減収、純利益は520億円と微増にとどまる見込みだ。

 ヤマダHDは家電を軸に家具や住宅などを扱う「暮らしまるごと」戦略を掲げている。だが、21年3月期の連結売上高でカラーテレビなどの家電とパソコンなどの情報家電の割合は78.6%を占めた。住宅関連の売り上げは20年3月期の9.3%から11.8%に高まった。20年3月期の家電比率は82.7%だったから、住宅関連が増えたのは確かだが、増加の勢いは鈍い。

 プライベートブランド(PB)商品で雑貨や家具などを揃える「ついで買い」を誘い、非家電事業を強化する作戦は道半ばだ。非家電の一環として銀行サービスに進出する。子会社を通じて銀行代理業の許可を得た。家電量販店チェーンが銀行代理業の許可を得たのは初めて。住信SBIネット銀行が仮想銀行「ヤマダネオバンク」を設ける。そこの口座を通じて預金、ローン、デビットカードなどを利用できる。実際のサービスを担うのは住信SBIネット銀行だがヤマダHDは自社のポイントシステムと組み合わせるなどして独自色を出したいとしている。

「暮らしまるごと」戦略の一環として、19年12月には大塚家具、20年10月には木造注文住宅のヒノキヤグループ(東証1部)と上場企業を相次いで傘下に収めた。次のターゲットが金融。銀行サービスを付加することによって、一層の相乗効果を引き出すことを狙う。

(文=編集部)