今までの日本の法人株主は互いに内政不干渉だったが、外国人投資家は違う。「物言う株主」だ。
かれらが相当数の株式を持つ会社では、当然、会社側の提案が否決される可能性が高くなる。しかも昨今の風潮として、日本の法人株主(主に金融機関)に対して、「内政不干渉ではならぬ、株主として正しい行動を取るべし」とプレッシャーを加え、そうした法人株主が適切な株主行動を取らない場合には、その法人の評価も下がるという事態になっている。東芝の今回の「人事案否決」の事例でも、会社側の提案を否決したのは外国人投資家だけでなく、そこに日本人株主も賛同したからではないかといわれている。
東芝は最近トラブル続きだったので、会社側の提案が否決されたと考える向きもあるだろう。しかし、今回のケースは特別な事例ではなく、先進事例である可能性が高い。やれやれ昭和時代に比べるとやりにくい世の中になってきたものだ――と嘆いている間に、「昭和は遠くなりにけり」という時代が到来するのだろう。
(文=菊地浩之)
●菊地浩之(きくち・ひろゆき)
1963年、北海道札幌市に生まれる。小学6年生の時に「系図マニア」となり、勉強そっちのけで系図に没頭。1982年に國學院大學経済学部に進学、歴史系サークルに入り浸る。1986年に同大同学部を卒業、ソフトウェア会社に入社。2005年、『企業集団の形成と解体』で國學院大學から経済学博士号を授与される。著者に、『日本の15大財閥 現代企業のルーツをひもとく』(平凡社新書、2009年)、『三井・三菱・住友・芙蓉・三和・一勧 日本の六大企業集団』(角川選書、2017年)、『織田家臣団の系図』(角川新書、2019年)など多数。