みずほフィナンシャルグループ(FG)は6月23日午前、東京・千代田区の東京国際フォーラムで定時株主総会を開いた。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ観点から、昨年に続きオンライン配信を実施。株主は昨年(417人)より少ない325人が出席した。
坂井辰史社長は冒頭、傘下のみずほ銀行で2月から3月にかけて相次いで起きたシステム障害について「ご迷惑をおかけし、深くおわびしたい。重く受け止め信頼回復に努めていく」と陳謝した。質疑応答の最中、坂井氏を株主総会の議長職から解任するよう求める動議を株主が提出。基幹システムを担当する石井哲執行役員専務を議長にした上で、この問題について詳細に説明するよう求めたが、反対多数で否決された。
グループCIO(最高情報責任者)として勘定系システムを統括する石井氏は取締役を引責辞任。石井専務を外した13人の取締役候補者を選任する人事案が提案され、賛成多数で承認された。総会の所要時間は1時間35分だった。
みずほ銀行ではシステムのトラブルによりATM(現金自動預払機)に5000超の通帳やキャッシュレスカードがのみ込まれる事故が発生した。みずほFGは6月15日、役員11人の減給処分を決めた。坂井社長が報酬月額の5割を6カ月、藤原弘治・みずほ銀行頭取が4カ月カットし、石井専務ら9人を減給とした。
みずほ銀は藤原氏が4月1日付で頭取を退き、会長になる人事を2月に発表していた。一連のトラブルを受けて3月半ばに首脳人事を取り消し、4月以降も藤原氏が頭取を続投し、原因の究明と再発防止にあたるとした。藤原頭取は引責辞任の方向で、水面下で調整されていたが、金融庁の処分が出る前のトップ刷新の人事の実施を見送った。
その後、第三者委員会の報告を受け、「経営責任を明確にするため藤原頭取は会長にも就かない」ことを決めた。後任の頭取には2月に発表済みの加藤勝彦副頭取が昇格する段取りだ。石井専務はCIOを外れる。勘定方システムを担う要職には、外部のシステムベンダーの幹部を招いて立て直しを急ぐことになった。
みずほ銀のATM障害をめぐり、みずほFGが設けた第三者委員会(委員長・岩村修二弁護士、元名古屋高検検事長)は6月15日、報告書をまとめた。4つのATMのトラブルについてシステム上、共通する原因は認められないと結論づけた。ただ、4つに共通する問題点として組織力、ITシステム統制力や顧客目線の弱さを挙げ、「容易に改善されない体質ないし企業風土がある」とした。
みずほが過去に起こした大規模なシステム障害との共通点もあったとし、「積極的に声を上げることで責任問題となるリスクを取るよりも、自らの持ち場でやれることはやったと言える行動をとる方が組織内で合理的な選択となっている」と認定した。
6月15日の坂井FG社長と藤原みずほ銀行頭取の記者会見は、経営トップと幹部行員の風通しの悪さを露呈した。「2月28日のシステム障害をいつ把握したのか」との質問に、坂井社長は「(障害発生から4時間程度経過した)当日午後2時すぎに一報のメールを受けた。ただ、そのときはメールを見られる状態になく、認識したのは午後4時頃だった。2時間にわたりメールを見ていなかったのは私自身の責任。批判は受け止めたい」とした。
藤原頭取は「午後1時半にネットのニュースで知り、すぐさま本部に連絡して状況を把握した。そのうえで、現状の把握とともにしっかりやるよう指示した」。坂井社長がメールの内容を認識したのは、藤原頭取が事態を把握した2時間半後であった。