たとえばTシャツも、価格以上の品質の魅力を感じさせる。「GU」や「ユニクロ」の外衣は購入しないという選択軸を持った消費者にとっても魅力的である。
「GU」は20年8月期の売上は2460億円に上り、成長を続けているが、縮小する国内アパレル市場でファストリグループには、まだ手付かずの中間価格帯市場は魅力的に映っていると推察される。
全国の百貨店や商業施設で店舗撤退が相次ぐアパレル業界。その後を埋める元気なブランドは、残念ながら多くはない。ファストリグループであれば商業施設にも好条件での出店が可能なため、数百店舗の出店など問題なく短期間に実現できる。グループ内には生産、広告・宣伝、MD(マーチャンダイジング)、ネット、店舗運営に通じた豊富な人材もいる。
これだけの条件をみれば、他のアパレル企業が「PLST」の動向を注視せざるを得ないのは当然であろう。
(文=たかぎこういち/タカギ&アソシエイツ代表、東京モード学園講師)
●たかぎこういち
タカギ&アソシエイツ 代表/スタイルアドバイザー/コンサルタント(ファッション視点からの市場創造)/東京モード学園ファッションビジネス学科講師
1952年、大阪生まれ。奈良県立大学中退。大阪で服飾雑貨卸業を起業。22歳で単身渡欧後法人化代表取締役就任、1997年香港に渡り1998年、現フォリフォリジャパングループとの合併会社取締役に就任。オロビアンコ、マンハッタンポーテージ、リモワ、アニヤ・ハインドマーチなど海外ファッションブランドをプロデュースし、日本市場の成功に導く。また、第1回東京ガールズコレクションに参画。米国の有名ファッション展示会「d&a」の日本窓口なども務めた。時代に沿ったブランディング、MD手法には定評がある。2013年にファッションビジネスのコンサルティング会社「タカギ&アソシエイツ」を設立。著書に『オロビアンコの奇跡』『超入門 日・英・中 接客会話攻略ハンドブック(共著)』(共に繊研新聞社)、『一流に見える服装術』(日本実業出版社)、『アパレルは死んだのか』(総合法令出版)、『アパレル業界のしくみとビジネスがこれ一冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)などがある。