中国、30年前のバブル崩壊直前の日本と酷似…原発事故を隠蔽、揺らぐ国際的威信

 中国の若者の急激な変貌ぶりを見て、筆者は「既視感(デジャブ)」を感じずにはいられない。30年前の日本の若者とそっくりだからである。『若者・アパシーの時代:急増する無気力とその背景』という著書がバブル経済真っ盛りの1989年に出版されている。アパシーとはドイツ語で「外界からの刺激に無感覚になること」を意味する概念であり、1960年代の米国で生まれた。著者である稲村博氏は「近年極端に無気力な状態を続ける若者が急増している。病気でもないのに仕事にも就かず長期間何もしない若者が目立つようになった」とした上で、「その原因は進学一辺倒の競争社会や若者から夢を奪う管理社会などだ」と指摘している。

 若者が仕事をせずにお金を持たず消費しない社会になれば、高度な経済発展は望めなくなるのは中国も同じである。金融市場では、長年の過剰債務のツケが大問題となりつつある。中国最大の不良債権処理会社である華融資産管理をめぐる不安が、他の資産管理会社や地方政府系国有企業に波及し始めているが、政府はいまだに抜本的な改善策を提示できていない。

 中国銀行保険監督管理委員会は10日、銀行の不良資産拡大などに改めて警告を発したが、その背景には中国経済の回復ぶりに注目して大量の投機マネー(ホットマネー)がこのところ大規模に流入し、不動産バブルを深刻化させていることがある。中国の専門家は「ホットマネーの流入は日本の不動産バブルが弾けた状況と似ている」と認識しており、米国連邦準備制度理事会(FRB)が今年後半に量的緩和を縮小することを契機にホットマネーが中国から大量に流出することになれば、不動産市場のみならず金融システム全体が悪影響を被るのではないかと警戒しているのである。

 中国も日本のように「失われた30年」を経験する可能性が日に日に高まっている。

(文=藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー)

●藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー

1984年 通商産業省入省

1991年 ドイツ留学(JETRO研修生)

1996年 警察庁へ出向(岩手県警警務部長)

1998年 石油公団へ出向(備蓄計画課長、総務課長)

2003年 内閣官房へ出向(内閣情報調査室内閣参事官、内閣情報分析官)

2011年 公益財団法人世界平和研究所へ出向(主任研究員)

2016年 経済産業研究所上席研究員

2021年 現職