飲食店の酒類提供禁止で国が直面する“酒税の税収減”という事態…少子化への悪影響も?

 コロナがどの程度、課税に影響を与えるかはわからないが、このまま「お酒禁止」が続くと、ささやかながらも税収に影響が出ることは間違いなさそうだ。

「酒の席」は過去の遺物になってしまうのか?

 コロナによってダメージを受けているのは税収ばかりではない。

 この状況での妊娠・出産をためらう動きが出ており、令和2年1~12月の累計妊娠届出数は87万2227件で、前年同期間と比較すると4.8%減だが、すべての月において前年を割っている。また、厚生労働省が5月25日に発表した人口動態統計によると、2020年の出生数は85万3214人で過去最低となった。

 出産だけでなく、婚姻件数も減っている。同じ速報を見ると52万8374組となっており、前年より16%も減少した。これも、コロナ禍により挙式を先延ばしにした影響などもあったかもしれない。

 コロナ禍が続くと、対面での出会いは減少する。ニューノーマルとして「オンラインデートで十分」「アプリ婚が主流になる」であればいいのだが、出会った2人がカップルへと関係を深めるには、実際に会って食事やお酒を楽しむプロセスは必要ではないだろうか。

 このまま飲み会禁止が常態化すれば、出会いの場が減ることは間違いない。合コンも、友人を紹介するための飲み会も、容易にはできなくなるからだ。

 仕事の場でもそうだろう。リモートワークが増え、初対面の人とリアルで会ってもマスク付きのため、相手がどんな顔をしているかよくわからない。これまで距離を縮めるために活用されてきた「お酒の席」という昭和・平成方式は、このまま過去のものになってしまうのか。

 なんだかんだ、酒は出会いの媒介者でもある。気になる相手を「今度飲みに行かない?」と誘ったり、意中の相手と近づいたきっかけが飲み会だったケースは多い。「禁酒」が続けば、それも消えてしまう。

 飲み会や合コンができないから出会いが減って、カップルも減り、やがて少子化につながる、とまで書くのは乱暴だが、まったく関係ありませんとも言い切れない。少なくとも、これまで人が出会う場には飲酒がつきものだった。時短かつアルコール提供なしが続けば、「この後、もう一軒行かない?」も今後は使えない誘い文句となる。もし奇特な学者の先生がいらっしゃれば、ぜひ、恋愛進展におけるお酒の効果について研究をお願いしたいものである。

お酒の禁止で“のんべい”も困るが国も困る

 もしこの世にお酒がなければ、飲酒運転も宴会セクハラもなくなり、ケンカやいざこざもずっと減るかもしれない。政府の見解通り、コロナ感染拡大の一端が酒の席にあるというなら、禁止もやむなしだろう。

 しかし、お酒を愛する1のんべいとしては、やっぱり飲食店でノンアルばかりではもの悲しい。その気持ちを紛らわすために、今回は国に納める酒税や少子化への影響を論じてみた。お酒を飲むなと言われるのは悲しいが、さりとて禁止による不利益が国のほうにもないわけではない。我々も、国も、どっちもしんどいのに変わりはないのだ。1日も早く、この酒断ち修行の日々が終わるように祈っている。

(文=松崎のり子/消費経済ジャーナリスト)

●松崎のり子(まつざき・のりこ)
消費経済ジャーナリスト。生活情報誌等の雑誌編集者として20年以上、マネー記事を担当。「貯め上手な人」「貯められない人」の家計とライフスタイルを取材・分析した経験から、貯蓄成功のポイントは貯め方よりお金の使い方にあるとの視点で、貯蓄・節約アドバイスを行う。また、節約愛好家「激★やす子」のペンネームでも活躍中。著書に『お金の常識が変わる 貯まる技術』(総合法令出版)。Facebookページ「消費経済リサーチルーム