歴史的な株高を背景にインターネット証券会社の業績が好調だ。大手5社の2021年3月期決算は全社が増収増益となった。新型コロナウイルスによる株式相場の乱高下を背景に、個人投資家の取引が活発になったことが背景にある。今後、各社が進める手数料無料化で収益力に差が出ることになろう。
【ネット証券5社の21年3月期決算】( )内は前期比増減率
社名 純営業収益 最終利益
SBI証券 1491億円(31.5%) 461億円(64.8%)
楽天証券 752億円(33.2%) 95億円(35.3%)
マネックス証券 288億円(16.9%) 26億円(61.8%)
松井証券 286億円(28.3%) 102億円(67.6%)
auカブコム証券 164億円(5.4%) 15億円(1.5%)
(注:SBIとマネックスは国際会計基準。楽天は12月期決算なので20年4月~21年3月の数字を使用)
最大手のSBI証券は売上高にあたる純営業収益、最終利益とも過去最高を更新した。傘下のSBI証券の業績が好調なことから、SBIホールディングス(HD/国際会計基準)の純営業収益は前期比47%増の5411億円、純利益は2.1倍の810億円に急伸した。対面営業最大手の野村ホールディングス(HD)の純営業収益1兆4019億円(前期比8.9%増)には及ばないが、業界2位の大和証券グループ(G)本社の4667億円(同9.5%増)を凌駕する。
子会社SBIソーシャルレンディングが虚偽や誤解を生じさせる情報を基に投資家から資金を集めていた問題で、未償還元本相当額をSBIHDが肩代わりして返還した。21年3月期連結決算で145億円の損失を計上したにもかかわらず純利益は倍増した。SBI証券や楽天証券の純営業収益の伸び率が30%を超えたのに対し、対面営業の野村HDや大和G本社は1ケタ台の伸びにとどまった。
ネット取引が大半を占める個人投資家の売買が増え、純営業収益の3~6割を占める手数料収入が大きく伸び、業績を牽引した。マネックス証券(単独ベース)、松井証券も純営業収益は2ケタ増となった。
とはいっても、株式などの手数料の無料化の影響で各社の収益力に差が出た。auカブコム証券は増収増益を確保したが、伸び率で見劣りする。19年12月から信用取引の手数料が撤廃になった。
コロナ禍をものともせずに口座数が増えた。なかでも楽天証券はグループのさまざまな商品やサービスの購入に付与される楽天ポイントを武器に、9カ月で100万口座を新たに獲得した。20年12月末の口座数は508万だったが、21年1~3月中に野村證券の532万口座を抜き、3月末に572万口座となった。3月の新規口座開設数は25万529と過去最高だったという。
新たに口座を開いた顧客の多くは若年層で、30代以下が68%。投資初心者が75%を占め、女性が48%に達した。ビジネスモデルは変わりつつある。新規口座のうち46%が楽天グループからの流入だった。また、新規口座開設者の多くが長期の資産運用を目的としている。投信積み立てを行う顧客は110万人を超えており、前年の2倍に拡大。月間投信積立額は350億円を突破した。
首位のSBI証券の口座数は3月末で681万口座だ。SBI証券とは、まだ100万口座以上の差があるが、SBIはグループのSBIネオモバイル証券とSBIネオトレード証券の口座数も加味して公表している。一部の顧客は重複しているため、“真水(まみず)”の口座数は681万より少ないとみられている。