バブル期の懐かし映像、なぜ平成生まれの若者に人気?「エモい」とハマる心理とは

 約50名のメンバーが在籍している「平成生まれが時代を考察する会」は、ファッションからエンタメまで幅広いジャンルのレトロカルチャーについて語り合う場となっており、会員の中には国会図書館や古本屋に通って好きな時代の資料を集めたり、当時の服やグッズを探し歩いたりと、研究熱心なレトロ好きが多い。

 主催者のあやね氏も、筋金入りのレトロオタク。過去の動画を漁ったり、雑誌を読み込んだりするだけでは飽き足らず、バブル期に流行ったファッションに身を包み、当時の雰囲気を再現した写真を撮ることが趣味のひとつだ。そんな彼女は、バブル景気で盛り上がる東京の街を映した動画が若者から支持されている理由について、こう推測する。

「平成生まれの世代は、幼少期から現代史に材を取ったテレビや映画、テーマパークに囲まれて育っています。いわば、小さい頃から『レトロ』というジャンルに触れている。それもあって、昔の文化や光景に親しみを持ちやすいのかもしれません。私自身、最新のヒット曲と往年の名曲を交互に紹介する歌番組『速報!歌の大辞テン』を観て歌謡曲や昭和アイドルについての知識を自然と身につけましたし、『ナンジャタウン』や『ラーメン博物館』といった昭和の街並みをテーマにした施設に親しんできました」(あやね氏)

 ノスタルジーをモチーフにしたテーマパークやテレビ番組に触れて育った平成生まれの若者は、生まれる前の時代に対しての抵抗感がなく、さらにインターネットを通じて過去のコンテンツに自在にアクセスすることができる。フラットな感覚で各時代の文化を見渡した結果、不思議で興味深く「エモい」のが、バブル時代のカルチャーということのようだ。

 昭和レトロに親しんでいる実年世代にとっては、平成レトロはまだちょっと生々しく、気恥ずかしい。そこに屈託なく切り込んで楽しんでいるのが、「閉塞感がデフォルト」な令和に生きる若者たちなのだ。

(文=山田剛志/清談社)