近年、世界全体で安心、安全な水や高純度の水への需要が高まっている。それが世界の水ビジネスの重要性を高めている。一例として、台湾の水不足が深刻であり、半導体の受託製造最大手企業である台湾積体電路製造(TSMC)への影響が懸念される。気候変動による水量や水質の変化などによって、国と国が水源をめぐって対立するケースもある。
そうした問題を解決するために、日本企業への役割期待が高まっている。現在では、水に含まれる塩類などを取り除くイオン交換樹脂技術などに強みを持つオルガノ株式会社の成長を期待する投資家が増えている。産業、生活用の水を確保するためにオルガノの水精製技術やソリューションへの需要は高まるだろう。
国連が推進する「持続可能な開発目標(SDGs)」のなかで「安全な水とトイレを世界中に」という目標が掲げられているように、安心して使うことのできる水の供給は、私たちの安心と健康に欠かせない。そのために、世界全体でより循環的な水の利用を支える技術の重要性は高まる。世界全体で水不足が深刻化し、安定した水供給の重要性が高まっていることは、オルガノなど日本の水関連企業が高い成長を目指すチャンスだ。
世界的に水の不足が深刻化している。地域的に見ると、中央アジアから中東、アフリカ地域で水の不足は深刻だ。それに加えて、米国や豪州の一部地域などでも水不足が顕在化している。その背景には、気候変動による干ばつの影響などがある。
見方を変えれば、世界全体の水不足という問題を解決する技術やシステムへのニーズが一段と高まっている。その市場規模は100兆円に達するとみられ、水処理装置やシステムの開発と提供を行うオルガノや栗田工業、水処理膜を生産する東レや、日東電工、東洋紡など日本企業が持つ水精製技術への社会的なニーズは高まるだろう。そうした水ビジネスの重要性の高まりを確認するために、世界の水事情がどのようになっているかを生活と産業活動の2つの点から確認しよう。
私たちの生活には、安心して利用できる水の確保が不可欠だ。成人の体の6割程度が水分で構成されている。ユニセフ(国連児童基金)のデータによると、2017年時点で安全に管理された飲み水を利用できる人は、世界の約7割だ。残る約3割の人々は、安全な飲み水へのアクセスが難しい。人々の健康のために、安全な水の供給体制の確立は喫緊の課題だ。また、新型コロナウイルスの感染の発生は、世界全体が手洗いの重要性を認識する機会になった。しかし、世界の4割の人々は、水と石けんが整った手洗い設備を使うことができない。
次に、産業界からの水需要も増大している。その一つが超純水(塩類や有機物などをほとんど取り除いた純度の高い水)だ。超純水は、医薬品や半導体などの生産に欠かせない。両分野ともに、ごく微量の不純物の混入が安全性や製品の性能に大きく影響する。関連する企業にとって安定的に超純水を確保することは欠かせない。特に、半導体や液晶パネルなどIT先端分野の製造業が集積する台湾では干ばつによって国全体での水不足が深刻化している。そうした状況下、世界全体で水ビジネスの重要性が高まっている。世界全体で水の争奪戦がし烈化しているようにさえ見える。
突き詰めていえば、安定した水の供給体制が実現するか否かは、世界経済の持続性を左右する。水源の確保にはじまり、工業用水、水道水、純水、超純水の精製と供給や、循環的な水の利用を支える新しい技術やシステムの供給など、水ビジネスの成長余地は急速に拡大しているとの印象を持つ。今後は水ビジネスでの成長を目指すスタートアップ企業も増えるだろう。