注目は、理工系の単科大学だ。国立では、伝統のある東京農工大学、九州工業大学、電気通信大学はもとより、地域において根強い人気の長岡技術科学大学と豊橋技術科学大学のほか、東京商船大学と東京水産大学が完全統合した東京海洋大学、京都を中心に独自の存在感を強めている京都工芸繊維大学などである。国立だから教育リソースも悪くなく、教育充実度も高い。
公立では、福島の会津大学も開校時は情報社会先取りの学科で注目されたが、最近は公立らしく地域貢献でも大きな役割を果たしている。
私立でも豊田工業大学は教育リソースが旧帝大系並みで、ここ数年ランクインしている。トヨタ自動車がスポンサーという強みを発揮している。東京理科大学や芝浦工業大学も、東京の伝統校らしく常にランクインしている。また、新型コロナ禍対策で大きな役割を果たした東京医科歯科大学が、21年は大きく躍進した。
志願者数トップの近畿大学もこの5年間一度もランクインできなかった50位までに、全国的な知名度があまりなさそうな常連ランク校が数校ある。その双璧が、西は立命館アジア太平洋大学、東は神田外語大学だ。両校とも歴史が浅いので教育リソースはいまいちだが、教育充実度は旧帝大系並みで、21年は早慶を上回る。また、グローバル時代に対応した国際性もトップクラスで、この2項目で50位以内を5年間キープしている。
大分県にあって、ベストセラーで有名な出口治明学長をリーダーに、留学生比率が高く、ほぼ全寮制の立命館アジア太平洋大は、本家の立命館大をランクでは上回る。
立命館アジア太平洋大に比べ、東京近郊で日本人学生の多い神田外語大は一般私大のタイプである。18年から下降気味ながら、21年は教育充実度で全国6位、国際性で全国18位をキープしている。学生の満足度が高い傾向にある。OBやOGの活躍によって、これから教育成果の上昇も期待できそうだ。
女子大の注目株は、公立の福岡女子大学だ。国際性で全国8位。なんといっても、長期海外研修や海外インターンシップなどのExpanding Your Horizons(EYH)プログラムが知られる。また、初年次に原則1年全寮制で留学生と共に暮らすので、異文化に対する理解力、外国語コミュニケーション能力を身につけることができる。
このように、ランクの順位にこだわるよりも、その大学の強みやセールスポイントを発見し、強みを理解した上で、受験生が自分の意志に見合った大学選びをするには、役に立ちそうだ。
(文=木村誠/教育ジャーナリスト)
●木村誠(きむら・まこと)
早稲田大学政経学部新聞学科卒業、学研勤務を経てフリー。近著に『「地方国立大学」の時代?2020年に何が起こるのか』(中公ラクレ)。他に『大学大崩壊』『大学大倒産時代』(ともに朝日新書)など。