英国の高等教育専門誌「Times Higher Education」(THE)が、3月に「THE世界大学ランキング日本版2021」を公表した。世界大学ランキングは他にも、英国の大学評価機関「Quacquarelli Symonds」(QS)によるものなどがある。もともとルーツは同じで、THEとQSに分かれた経緯がある。
THEは5年前から日本の教育会社・ベネッセコーポレーションと協力して、日本版の大学ランキングを公表している。身近なので、マスコミでは注目度が高い。この日本版の評価基準は「教育リソース」「教育充実度」「教育成果」「国際性」の4つである。
教育リソースは、(1)学生一人あたりの資金、(2)学生一人あたりの教員比率、(3)教員一人あたりの論文数、(4)大学合格者の学力、(5)教員一人あたりの競争的資金獲得数である。
教育充実度は、(6)学生調査:教員・学生の交流、協働学習の機会、(7)学生調査:授業・指導の充実度、(8)学生調査:大学の推奨度、(9)高校教員の評判調査:グローバル人材育成の重視、(10)高校教員の評判調査:入学後の能力伸長である。
教育成果は、(11)企業人事の評判調査、(12)研究者の評判調査である。
国際性は、(13)外国人学生比率、(14)外国人教員比率、(15)日本人学生の留学比率、(16)外国語で行われている講座の比率である。
以上16の項目について0~100のスコアがあり、その比重に応じて合算し、総合ランキング、分野別ランキングが決まる仕組みになっている。
教育リソースは客観的データがあるが、教育充実度と教育成果は参加者の評価をベースにしているので、主観的要素が強いといえるだろう。しかし、受験では高校教員の評価、就職では企業人事からの評価が、その大学のブランドイメージを構成する大きな要素となっていることは無視できない。
国際性は客観的なデータである。やや従来の大学ブランドにない評価基準の印象を受けるが、グローバル化に直面する大学としては欠かせない視点ということであろう。
ランキングを見ると、上位に旧帝大系や東京工業大学などの国立大学が並び、筑波大学や広島大学など地方の有力国立大が続く。2018年にはトップだった東京大学が20年、21年は東北大学にトップを譲っているのは、国際性で差がつけられているからである。教育リソースなどは客観的な数字で年による変動が大きくないが、国際性などは大学の方針や姿勢によって数字が動く可能性があるためとみられる。
それは私立大学でも言える。国際基督教大学はOGの秋篠宮家子女の結婚問題で注目されているが、なんといっても昔から国際性が抜群でトップクラスの高得点だ。教育充実度も、グローバル人材の育成という面で評価されていると言えよう。
早稲田大学と慶應義塾大学は、この5年間、まさに抜きつ抜かれつの早慶戦を繰り広げている。早大は国際教養学部があり、留学生実数では全大学1位なので国際性が高く、慶大に圧倒的な差をつけている。半面、教育リソースでは医学部のある慶大が上回っている。上智大学は教育充実度がトップクラスだが、教育リソースが弱い。
GMARCH(学習院大学・明治大学・青山学院大学・立教大学・中央大学・法政大学)と関関同立(関西大学・関西学院大学・同志社大学・立命館大学)では、立命館大が例年30位前後で健闘している。教育充実度が早慶より高いのが強みだ。明治大、同志社大、立教大、関西学院大、中央大は40~50位で混戦模様。年によって違う。ただ、このクラスの大学は伝統があり、教育充実度が高い傾向にある。