麻布・開成など難関校も倍率低下?中学受験に大異変、来年はどう変わる?傾向と対策

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開成中学校・高等学校(「Wikipedia」より)

 今年の中学受験は、新型コロナウイルスの感染拡大により緊急事態宣言が発令された影響もあり、学習が思うようにはかどらなかった受験生が多かったようだ。入試シーズン前に行われた難関校の入試体験会では、例年に比べ問題を易しくしたにもかかわらず、合格最低点、平均点ともに低下したというデータも出ている。

 では実際に中学受験を終えて、今年はどういった傾向や変化があったのだろうか。中学受験に詳しく、著名講師による講演会などを主催する森上教育研究所代表・森上展安氏に、来年の中学受験生とその保護者向けに注意すべき点を聞いた。

難関校の志望者が減少し、偏差値50以下は増加

「今年は、偏差値50以上の学校の受験生は減り、偏差値50以下の学校の受験生が増えました。これは例年ではあまり見られない、非常に珍しい傾向です。各中学受験塾では定期的に模擬試験を実施するため、その結果を鑑みて受かりやすい学校を志望した安全志向の受験生が多かったということでしょうね」(森上氏)

 難関校側は、その模擬試験の結果を受けて例年より問題を易しくするなどの修正は加えなかったのだろうか。

「都立の中高一貫校は問題を易しめに出していた印象がありました。私立ではその傾向が見られなかったものの、難関校の渋谷教育学園幕張中学は例年よりやや易しめな問題を出題したにもかかわらず、合格最低点は昨年より低かったという結果が出ています」(森上氏)

 入試体験会で明らかになったとおり、受験生の学力レベルが下がったことを表す事例もなかにはあるということだろう。

「話を戻しますが、安全志向の受験生が多かったという傾向は、前年度の倍率が低い学校に受験生が集中した点にも表れています。特に女子校は多く、フェリス女学院中学、桜蔭中学、山脇学園中学、昭和女子大学附属中学、実践女子学園中学、跡見学園中学、鷗友学園女子中学、女子美術大学付属中学、男子校では駒場東邦中学、サレジオ学院中学などがその例です。

 反対に、倍率が例年3倍近くある難関校、例えば女子校だと女子学院中学、雙葉中学、洗足学園中学、男子校だと麻布中学や開成中学は今年に限ってはあまり人気が出ませんでした。

 今年は、前年度に倍率の低かった学校のみ受験生が増えました。なかでも女子は特に安全志向が強い傾向にあるため、受かる確率が極めて高い中学に志望者が集まったんです。あとは、由緒ある有名校でネームバリューがあるにもかかわらず、そこまで偏差値が高くない学校が人気でしたね」(森上氏)

 倍率によって極端に人気が左右された今年の中学受験だが、その傾向には注意すべき点もあるという。

「いくら倍率が低くても志願者のレベルが高ければ安心はできないですから、倍率で学校を選ぶ思考は危険といえます。データ上で受かりやすい学校を選ぶことは戦術的ですし非難されるべきことではありませんが、倍率にこだわりすぎるのもよくありません。やはり多少倍率が高くても、ご自身が入りたいと思う学校にチャレンジするのがベストではないでしょうか。そのためには早めに志望校を決めて、出題傾向を研究して受験することが大切です」(森上氏)

 入りやすい学校を選ぶより入りたい学校を目指すほうが、子供の今後のためにもなるだろう。

コロナ感染リスク回避の影響もあり、難関校は受験生1~2割減

 では、コロナ禍における影響は数字に表れていないのだろうか。

「コロナ禍は関係なく中学受験者数そのものが若干減ったという前提はあるのですが、今年度はそれに加えてコロナ感染リスクもあったので、県と県をまたいだ受験が減りました。

 埼玉県や千葉県、茨城県では1月に入試を実施しますが、埼玉県に比べて千葉県のほうが大幅に減少していて、その理由としては千葉県の学校が1月下旬に入試をするのに対して、埼玉の学校は1月上旬に試験があったためだと言われています。中学受験の本番といえる2月1日から1週間の感染リスクを下げるために、受験生が考慮した結果として、こうした傾向に表れてきたのではないかといわれています」(森上氏)