国会議員秘書歴20年以上の神澤志万です。
3月21日、国の持続化給付金を騙し取ったとして、総務副大臣の熊田裕通衆議院議員の元事務所スタッフら4人が逮捕されましたね。秘書ではなく、「スタッフ」というところが微妙です。
主犯とされる加藤裕容疑者は党員拡大などを担当する「ボランティア」だったそうですが、2020年5月に「自民党の秘書」を名乗って給付金のセミナーを開催していたようです。「自民党という立場を使って抜け道を知っている」とかなんとか言って、大学生らセミナーの受講者に不正受給を持ちかけ、手数料収入を得ていたんですね。
犯罪行為には一切関係がないのに名前を使われてしまう国会議員も被害者ですが、世間は採用責任を追及するので大変です。
最近、国会議員の「元スタッフ」や「元秘書」の犯罪報道を目にする機会が増えている気がして、がっかりしますね。確かに、私たち秘書は地元の個人事業主さんなどからの相談で持続化給付金の交付手続きについて、お手伝いやアドバイスなどをさせていただく機会はありましたが、決して手数料などはいただきません。もちろん、他の陳情の対応などでも同様です。
手数料を受け取ることは、税理士や会計士などの資格がない限り、違法になるからです。そもそも、手数料や謝礼がほしくてお手伝いをしているわけではなく、ボスである国会議員の「お困りの方々の力になりたい」という意向を反映して動いているのです。
公的書類の作成など手続きに必要な実費をいただくことはありますが、あくまで実費のみです。もし、そういった場面で手数料を要求されることがあれば、「詐欺」を疑っていただきたいと思います。
神澤は、「優秀そうな秘書」と「詐欺師」は紙一重だと思っています。この加藤容疑者も、おそらく学生たちがまったく疑問を持たないほど弁舌さわやかな悪人だったのでしょうね。
実は、永田町にはそういう輩はけっこういるんです。口がうまくて、寄付金や党員を集めたりすることに長けているので、ボスも「優秀な秘書だ」と思ってしまうことがあります。
ちなみに、加藤容疑者は10年前くらいに結婚詐欺で逮捕された過去もあるそうですが、自民党の衆議院事務所はその前歴を見過ごして採用してしまったようです。神澤も、何度か怪しい人物の秘書採用面接に同席したことがあります。明らかに怪しいのにボスが採用しようとしたので、調査して結果を伝えて、全力で反対したこともあります。
議員との信頼関係があれば、そういうことも感謝されますが、信頼関係がなければ「採用の邪魔をした」と恨まれることになります。とはいえ、たいがいそういう人は他の事務所で採用されて問題を起こしているので、自分の判断に間違いはなかったと思っています。
特に記憶に残っているのは、1億円の強盗致傷で逮捕・起訴されている上倉崇敬容疑者ですね。上倉容疑者は、自民党の二之湯智参議院議員の公設秘書だった2010年に事件を起こしています。失職中にお金に困って……ならまだしも(よくはないですが)、公設秘書在職中ってすごいですよね。
2016年に同じく強盗致傷で逮捕されて、懲役5年の実刑判決を受けて服役していたときに、手口が似ているとして調べられて再逮捕されたそうです。
この上倉容疑者が、神澤のボスの面接に来たことがありました。しかも、直接ではなく地元の財界人を通すなど、手の込んだ方法で何度も来るんですよ。その都度やんわりとお断りしましたが、仲介した方の強い希望で実際に面接をしたこともあります。なんか信用できず、採用には至りませんでした。