20年3月決算で三菱商事はウルトラCを使って利益を捻出し、伊藤忠の首位を阻止した“実績”があるだけに、「丸紅にまで抜かれることはあるまい」(商社担当のアナリスト)との見方が大勢を占める。だが、安閑とはしていられない。
住友商事は唯一、赤字を計上する。21年3月期の最終損益は1200億円の赤字(前期は1713億円の黒字)。欧米で展開する青果事業やマダガスカルのニッケル事業の減損が重荷になっている。それでも従来予想の1500億円の赤字から300億円上振れする見通しだ。住商の兵頭誠之社長は2月4日のオンライン会見で、今期の赤字転落の経営責任をとって「自身を含めた全執行役員48人の今年6月支給予定のボーナスをゼロにするほか、自身の役員報酬の4割削減」などを発表した。
豊田通商は800億円の最終利益の予想を1200億円(前期比11.5%減)に上方修正した。双日は従来予想300億円(前期比50.7%減)を据え置いた。
総合商社の21年3月期の決算発表は5月に入って始まる。序列がどう変わるのか。三菱商事が22年3月期決算の見通しをきちんと出し、収益力の回復を数字で示すことができるかどうかが焦点となる。「未定」とすれば、投資家の失望が再び強まるだろう。
もし、三菱商事の収益の回復が示されれば、22年3月期は、まさに伊藤忠vs.三菱商事の血で血を洗う“死闘”となるからである。
(文=編集部)
【商社7社の21年3月期の最終損益の予想】
最終損益(前年同期比増減率)
伊藤忠商事 4000億円(▲20.2%)
三井物産 2700億円(▲31.0%)
三菱商事 2000億円(▲62.6%)
丸紅 1900億円(黒字転換)
豊田通商 1200億円(▲11.5%)
双日 300億円(▲50.7%)
住友商事 ▲1200億円(赤字転落)
(▲は赤字またはマイナス)