ニコン、カメラから撤退する日…過去最悪の赤字で危機、売上の5割が蒸発、デジカメ壊滅的

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「Nikon デジタル一眼レフカメラ D5600 ダブルズームキット」(サイト「Amazon」より)

 カメラ映像機器工業会(CIPA)によると、2020年のデジタルカメラの世界出荷台数は19年比42%減の888万台だった。スマートフォンの台頭で市場の縮小が続くなか、新型コロナウイルスの感染拡大でイベントの中止や外出自粛が相次ぎ、出荷台数が大幅に減った。台数ベースではピークだった2010年(1億2146万台)の14分の1に激減した。機種別ではミラーレスが26%減の293万台となり、47%減だった237万台の一眼レフを年間ベースで抜いた。

 調査会社のテクノ・システム・リサーチによると、20年1~9月のミラーレス市場はソニーが35%のシェアを占めて首位。キヤノン(30%)は2位。一眼レフ2位のニコンは7.5%で富士フイルム(12%)やオリンパス(8%)の後塵を拝している。

「オリンパスに続いて、ニコンもカメラから撤退するのではないか」(関係者)との観測が浮上したのは、ニコンの苦しさのうつし絵だ。ニコンのカメラ事業は継続できるのか。

売り上げは5年でほぼ半減

 ニコンの2021年3月期の連結決算(国際会計基準)の予想は、売上高にあたる売上収益が前期比24%減の4500億円、営業損益が650億円の赤字(前期は67億円の黒字)、最終損益が420億円の赤字(同76億円の黒字)と、過去最悪になるとしている。

 2016年3月期には連結売上収益が8410億円あったから、5年間で46%減とほぼ半減する計算だ。5200億円あったカメラなどの映像事業の売上収益が1450億円に激しく落ち込むのが主因だ。実に72%減と大幅なダウンとなる。21年3月期の映像事業の営業損益は400億円の赤字の見込み。全社の営業赤字の6割を映像事業が占める。

 カメラの販売台数は、レンズ交換式デジタルカメラが前期比47%減の85万台、交換レンズも47%減の140万台、コンパクトデジタルカメラにいたっては70%減の25万台とほぼ壊滅状態だ。稼ぎ頭だったカメラ事業の低迷が業績悪化の最大の要因だが、それだけではない。

半導体製造装置はインテル向けの一本足打法

 カメラに替わって大黒柱となった半導体液晶装置、液晶パネル装置の精機事業の21年3月期の売上収益は前期比22%減の1900億円、営業利益は92%減の40億円を計画している。営業黒字は確保したが、カメラ事業の不振を補ってきた半導体製造装置の業績が減速したのが痛い。

 かつてニコンは半導体製造装置の世界シェアで首位だった。その頃の勢いはすでに消えた。半導体製造装置の主要顧客の米インテルの不振が原因である。米エヌビディアが時価総額でインテルを抜くなど、半導体業界の構造変化の影響がモロに出た格好だ。

 ニコンが販売する半導体製造装置の7~9割がインテル向けとみられている。ニコンが装置を納入してきた国内電機大手は、2000年代に相次いで半導体事業から撤退・縮小してきた。この結果、相対的にインテルの比率が高まった。02年、ニコンが経営難に陥ったとき、インテルが転換社債を引き受けるかたちで開発費100億円を負担した。こうした経緯もあって、ニコンの半導体装置はインテルに依存する一本足打法となった。

 半導体露光装置の販売はインテルの投資一巡の影響が出て、大きく落ち込んだ。21年3月期の販売台数は27台の見込みで前期実績の45台から40%減だ。しかも、そのインテルは自社工場で生産してきた半導体を、外部からの調達に切り替える方針を打ち出した。インテルが自社工場で生産を減らせば、当然のことだが、ニコンの半導体製造装置の販売も減る。