昨年の11月17日に発売されたアップルの新型「Mac Book Air」。
「13インチMacBook Pro」「Mac mini」と共に登場するや、デザインは旧「Mac Book Air」とほぼ同じながら、アップルが自社開発した「M1チップ」のスペックの高さに購入者から次々と絶賛のレビューが相次いでいるのだ。
その驚くべき性能はいかほどのものなのか、そして、現状比肩しうるWindows PCは存在するのか。今回はそんな気になる疑問を、楽天証券経済研究所チーフアナリストとして、個人投資家向けに半導体・ゲーム・エンタメ業界を分析している今中能夫氏に聞いた。
破竹の勢いを見せるアップルの新型PCだが、ユーザーとしてはこのMac Book Airと競合できる商品にどんなものがあるのか知りたくなるものだろう。実際のところ、どうなのだろうか?
「結論から言いますと、同価格帯で今のMac Book Airに比肩しうる性能を持つWindows PCは“ない”と言っていいと思います」(今中氏)
それほどまでに優秀というのか。
「Windows PCにはMacのような価格をどの店舗でも一律揃える“価格統制”がないため、厳密に言うと“ない”と断言はできません。ですが、新型のMac Book Airは、8コアCPUと7コアGPUを搭載したM1チップ内蔵、256GBストレージというスペックで10万4800円(税別)からになっていますので、実際問題、この破格の安さと性能に比肩しうるノートPCは今、市場に出ていないと言っていいでしょう」(今中氏)
性能的に並ぶものなしということだが、では実際、どういう部分が優れているのか解説していただこう。
「一番はやはりM1チップの性能です。順を追って説明していきましょう。まず、このM1チップはSoC(エスオーシー)と呼ばれる、PCにおいて頭脳とも言えるシステムたちを、一つの半導体にすべて書き込んだスタイルを取ったチップになっています。そして、この半導体に書き込む際に、これまでは最先端CPUの場合、7ナノという細さの光で書き込んでいたのですが、このM1チップはさらに細かい5ナノで書き込まれており、これにより多くの機能を実装できているのです」(今中氏)
では、実装された機能にはどのようなものがあるのだろうか。
「今回のM1チップでとりわけ性能が向上したといわれているのが、コア数です。そもそもコアとは、PCにおいて計算を担う頭脳のようなもので、ひとつのコアでひとつの計算を行います。現在は4個から6個が主流で、かなり高額・高性能なPCになると8個ものコアを持つチップもあります。そしてコアが増えればコア数に応じて異なる計算が同時に行えるようになるのです。これはイコールPCの処理速度の速さにもつながります。
そして本題である今回のM1チップですが、これは8コアを搭載しています。それにもかかわらず値段が10万円台というのは驚きのスペックと言えますね。同じような演算能力を持つインテルの『Core i9』という8コアのCPU搭載のPCで言えば、20万円、30万円を優に超えるものばかりですから」(今中氏)
Windowsユーザーであれば、Core i9が高額PCに搭載されたハイスペックなCPUであることはご存じだろう。
では、そんなM1チップを、なぜアップルは低価格で実現できているのかが気になるところである。