JR東日本は1月20日、羽田空港と東京都心を結ぶ「羽田空港アクセス線」の2029年度の開業を発表した。東京駅から羽田空港までは現行の鉄道を利用すると30分程度かかるが、羽田空港アクセス線なら、これを18分程度に短縮できる。
建設工事が必要になるのは東京貨物ターミナル(東京・品川区)と空港の新駅までの約5キロメートルで、1月20日付で国土交通省の鉄道事業許可を取得した。22年度ごろの着工を目指す。東京貨物ターミナルから山手線田町駅付近までの約7.4キロは自社の休止路線を改良して運行する。田町駅付近で東海道線に乗り入れる予定だ。羽田空港の新駅から田町駅付近までの建設費は約3000億円を見込む。
羽田空港アクセス線は、新線と既存の路線を結んで空港と首都圏を直結させる。新宿・池袋方面の「西山手ルート」、りんかい線方面に延びる「臨海ルート」、宇都宮・高崎・常磐方面の「新山手ルート」の3ルートが計画されている。
羽田アクセスの新線構想は、ほかにもある。ひとつは、「蒲蒲線」として知られる新空港線だ。現在は蒲田止まりとなっている東急多摩川線を矢口渡駅付近から地下化して京急蒲田まで延ばし、さらに京浜急行電鉄・空港線の大鳥居駅に接続するというものだ。「蒲蒲線」は東急と相互直通運転する東京メトロ副都心線などを経由して、渋谷や池袋、埼玉方面から羽田空港に行きやすくなることが期待されている。
もうひとつは、都心直結線の新線(押上―新東京―泉岳寺)だ。都心の大深度地下に設ける新東京駅を通過して京成電鉄の押上駅と京浜急行・泉岳寺駅を結ぶ。両線は現在も都営地下鉄浅草線経由で直通運転しているが、新たに東京駅近くを通る新線を建設して都心部へのアクセスを改善。さらに成田空港・羽田空港を直結する計画を立てている。JR羽田空港アクセス線が始動した。ライバルはどう動くのか。
首都圏で「今世紀に入って初の私鉄の再編」が取り沙汰されている。「選択」(21年1月号)でも触れられているが、コロナ禍で人の移動が制限され、首都圏の私鉄が本業の鉄道事業で軒並み赤字に沈んだことが引き金となった。首都圏の私鉄8社(東武、東急、京王、小田急、京成、京浜急行、西武、相鉄)の21年3月期決算は大幅な減収となり、軒並み赤字に転落する見込み。
【首都圏私鉄8社の2021年3月期予想】
売上高 最終損益
西武HD 3320億円(▲40%) ▲630億円
東急 9310億円(▲20%) ▲600億円
小田急電鉄 3831億円(▲28%) ▲343億円
京王電鉄 3250億円(▲25%) ▲280億円
東武鉄道 4922億円(▲25%) ▲270億円
京成電鉄 2191億円(▲20%) ▲262億円
京浜急行電鉄 2343億円(▲25%) ▲253億円
相鉄HD 2253億円(▲15%) ▲70億円
(注:売上高の▲減収率。最終損益の▲は赤字、HDはホールディングスの略)
売上高に対する赤字の割合は、西武HDが19%と最大。京成が12%、京浜急行が11%と続く。西武HDはホテル・レジャー施設の赤字が大きく、京成と京浜急行は鉄道事業の赤字だ。両社とも空港路線が主力で、コロナでインバウンドが消えた影響を受けた。
赤字額が小さかったのは相鉄HD。相模鉄道はJRに続き22年度に東急と直通運転を始める。新宿などへの買い物客が利用したため、相対的に落ち込みが小さくて済んだ。相鉄線は他社ほどインバウンドの利用客が多くなかったこともある。