「フリマアプリを探せば、どんなものでも売っている」と、ある40代主婦はいう。事実、鬼滅の刃コラボグッズやNintendo Switch、最近では音声SNS「Clubhouse」招待枠などもメルカリなどのフリマアプリで転売されて話題となった。メルカリではサービスや権利などの実態のない商品の売買は禁止されているが、Clubhouse招待枠は1万円前後で販売されており、その多くがすでに売れていた。
「要らないものを売っていいお小遣い稼ぎになるから、ママ友もみんなやっている。でも、転売ヤーが多すぎて鬱陶しいと思うこともある。抽選にはずれた子どもが欲しがっているゲームはすごい値段になっていて、ずっと買えなかった」
転売とは、購入したものをよそに売り渡す行為を指し、転売をする人は「転売ヤー」と呼ばれる。転売自体は違法ではないが、転売ヤーの買い占めによって、必要とする人が購入できないことは社会問題化している。人気の商品を転売ヤーに買い占められないように工夫している店舗も増えてきているが、根本的な解決にはいたっていない。
メルカリなどのフリマアプリにおける転売問題と対策の現状について解説したい。
経済産業省の「令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)」(2020年7月)によると、メルカリを含む2019年のCtoCのEC市場規模は、前年比9.5%増の1兆7407億円と推計されている。フリマやオークションなどの個人間取引は増加し続けているのだ。
「少しでも売れそうなものがあったら何でも売る。お金ないんで」とある大学生に聞いた。「要らないものでお金になるし、欲しいものが安く手に入るなんて最高。自分は要らないものでも、絶対に欲しい人はいる」。使っているうちに、ある程度高く売れそうなものがわかってきたため、そのようなものは積極的に手に入れるようにしているという。たとえば期間・場所限定モノ、ファンが多いモノ、話題性があるモノなどだ。
2020年11月に発売開始となったソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)の新型ゲーム機「プレイステーション5(PS5)」も高額転売のターゲットとなった。メルカリでは発売前より高額出品が相次いでおり、一時は30万円の値がついたものもあった。品薄状態が続く中、メルカリでは約6000件が平均で定価より6割高い金額で売買されたという。それを受けて、SIEはメルカリに転売防止について理解と協力を要請している。
一方、メルカリは2021年1月に、サービス運営の基本的な考え方となる「マーケットプレイスの基本原則(Principles)」を策定・発表。あくまで出品者と買い手の自由な取引を前提とし、出品自体は規制しない方針だ。
代わりに、ゲーム機などの人気商品は、商品の発売元などと連携し、小売価格とかけ離れた出品を調査。商品価格が著しく高騰した商品については、商品検索画面や取引画面内で、ユーザーに発売元のウェブサイトで小売価格を確認することなどを求める「価格アラート機能」を今春以降に導入予定だ。
PS5の場合、フリマアプリでの出品の説明欄に保証書やレシートの記載がないものもあった。このような商品を落札、保証書がついていなかった場合は、メーカー保証が効かない恐れが出てくる。精密機器や高額商品は、通常通り店舗などから購入したほうが安心といえるだろう。
前述のように転売自体は違法ではないが、違法行為に当たる例もある。たとえばフリマアプリで要らないものを売るだけなら問題はないが、事業として継続的に行う場合は古物商許可証が必要であり、所持していなければ古物営業法違反となる。もちろん、転売が禁止されているチケットの転売も、チケット不正転売禁止法違反だ。