東証・市場再編、「一部上場」乱発の終焉…約600社が“一流企業”から脱落か

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「Getty images」より

 東京証券取引所は2022年4月、現在の東証1部、2部、マザーズ、ジャスダックの4市場体制を廃止し、プライム、スタンダード、グロースの3市場に再編する。それぞれの市場の役割を明確にしたうえで、最上位にあたるプライムの上場基準を厳しくして、グローバルな投資マネーの呼び込みを狙う。

 プライムは海外の機関投資家などが投資対象とする大企業向け市場だ。上場基準は時価総額が250億円以上、流通株式の時価総額100億円以上、発行済み株式のうち市場で売買できる株式(流通株式)の比率が35%以上とする。直近2年合計で経常利益が25億円以上の企業が揃うようにする。

 プライムの上場企業には21年に金融庁と東証が改定を予定している新たな企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)を適用する。海外市場と遜色のない基準を企業に求めることで、海外投資家が投資しやすくする。スタンダードは現在の2部と多様な会社が集まるジャスダックを統合し、中堅企業向け市場を想定している。流通時価総額10億円以上、流通株式比率25%以上、経常利益1億円以上とする。

 新興市場マザーズはグロースが新たな名称になる。流通時価総額5億円以上、流通株式比率25%以上、利益基準はなし。規模が小さくても高い成長を実現するための事業計画とその進捗の開示が必要で、一定の市場評価が得られる新興企業向けの市場となる。従来の市場区分では新興市場はマザーズとジャスダックが併存するなど曖昧だった。

 21年6月末を基準日として条件に合致するかどうかを判断する。時価総額は21年4~6月の平均値を使う。企業は21年9~12月に新しい上場先を選ぶ手続きをして、22年1月に各市場の上場銘柄一覧を公表する。

 ただ、1部市場に上場している企業がスタンダードに移る場合、「格下げ」のイメージがつきまとう懸念があるため、すべての1部上場企業がプライムに移行できる経過措置が設けられることになっている。流通時価総額が10億円以上という条件を満たせば経過措置としてプライムに残留できることになるわけで、抜け道は用意されている。

脱落するのは600社程度か

 市場再編の狙いは、曖昧だった市場の位置づけを明確にし、投資家にとってわかりやすい市場構造に改めることにある。東証が「1部上場」の金看板を乱発してきたことに国内外の投資家による不満が高まっていた。

 市場再編は、東証1部に上場している既存の企業にとって影響は甚大だ。東証上場3755社のうち2186社が1部上場(21年1月6日時点)。実に6割弱が現在は東証1部銘柄となっているわけだ。プライムが新たな上場基準とする流通時価総額100億円以上を満たせない企業は600社程度あると見られる。これらは早晩、プライム市場から退出を求められる。

 もうひとつの狙いは、市場に出回らない持ち合い株を排除することにある。流通株式の定義も変える。これまで保有比率10%未満の企業が持つ株にも流通性を認めていたが、実態を重視する方針に転換。金融機関や事業会社が保有する政策保有分は流通株式から除く。一般投資家が売り買いできる株式の割合(流通株式比率)が35%以上とならないとアウトだ。時価総額が大きくても流動性の低い銘柄は、理論上はプライムに残れないことになる。

 東証1部企業の多くはプライム市場を選ぶと見られている。だが、マーケット関係者の視線は冷たい。「現在(2186社)の半分(1000社強)が脱落して、“プライム銘柄”ではなくなる」(関係者)との予測もある。600社どころか1000社から“一流企業”の肩書きがなくなることになる。