市場参加者から「有力銘柄」とみられている企業の株価が突然、急落したら、それは政策保有株の大量売りが出たと考えられる日が近くやってくる。3月決算会社は1~3月中に、政策保有株について一定の結論を出す必要に迫られている。ゆうちょ銀行などは流通株式比率の低い銘柄の代表のようにみられている。日本郵政グループのゆうちょ銀行にとって新たな頭痛の種ができた。
マーケットにはこんな悪魔のシナリオがある。花形の東証1部から落ちたとする。イメージダウンは避けられない。資金調達だけではない。営業や人員の採用にも影響が出る。株主は反発し、機関投資家や大口投資家が、ドロップアウト組となる持ち株を叩き売ることになる。
海外の機関投資家から「諸悪の根源」と酷評される政策保有株の排除が、市場再編の究極の目標である。取引先との関係維持や買収防衛といった経営戦略上の目的で保有している株式が、目の敵(かたき)にされている。政策保有株は1960年代ごろから広まった日本特有の仕組みで、株式持ち合いの形が多い。片方の企業だけが保有する場合もある。「モノ言わぬ大株主」が存在することで企業統治(コーポレートガバナンス)に弊害が生じる。
今回の市場再編では、銀行や取引先企業が保有する政策保有株は流通株式とはみなされない。プライム市場に入るために政策保有株の売却が進むとみられている。20年11月、トヨタ自動車がトヨタ紡織株の一部を売却し、保有割合は4ポイント低下し35%となった。トヨタ紡織が流動性の向上のために売却を依頼したという。トヨタ紡織の株価は当然のことだが下落した。
プライム市場に残るために政策保有株の売却を働きかければ、株価は下がる。売ってもらわなければプライム市場には残れない。進むも地獄、進まなければもっと悪い事態が予想される。
日経平均株価はバブル期以来の高値を記録した。政策保有株を高値で売却できやすい環境が整っている。株式市場に流通する株式の1割を占めるとされる政策保有株の売却が加速すれば、株式の需給に与える影響は小さくない。プライム銘柄候補に内在する政策保有株の動向から目が離せない。
(文=編集部)