楽天、西友買収でスーパー事業参入は「携帯電話事業の成功より難しい」…アマゾンと激突

 楽天が20%の出資比率を引き上げることも株式市場は織り込み済み。「楽天が西友を連結子会社にするという決断でもすれば状況は大きく変わるが、現時点ではお手並み拝見の域を出ない」(前出のアナリスト)。

 今回のM&Aにあたり西友の企業価値は1725億円(約16億ドル)と試算された。単純計算になるが楽天は西友の株式取得に345億円を投じることになる。

 今後の段取りはどうなるのか。楽天は21年1月、新設する子会社「楽天DXソリューション」(東京・世田谷区)を通じて西友の株式を取得する。楽天DXソリューションは西友以外の小売業に対してもDX支援を行う。AI(人工知能)による需要予測を活用した在庫管理や価格設定の最適化、スマートフォンなどによるレジなし決済の導入などを予定している。

 世界規模の投資ファンド、KKRが日本で小売に投資するのは初めてだ。米国で100円ショップ、中国では生鮮食品と日用品のEC企業に投資している。KKRは「西友の低価格路線は維持する」としている。新たな経営トップには日本人で小売業界の経験者を据えたい考えだ。

 新生・西友には、成功体験を持った小売の経営者が必要になる。ファミリーマートからユニーを買い取り完全子会社にして戦力化したパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)の経営幹部を引き抜くなどといった荒技を繰り出すしか、人材確保の方法はないかもしれない。PPIHはディスカウントストア、ドン・キホーテを成功させ、ユニーを利益の出る会社に変身させた。「総合スーパーの舵取りはかなり難しい」(ファミマの親会社である伊藤忠商事首脳)といわれてきたが、PPIHは成功させた。

 西友の脅威となるのはアマゾンだ。19年からアマゾンの有料会員サービス「プライムナウ」の利用者にライフコーポレーションが首都圏で商品を宅配するサービスを始めた。7月からは大阪に進出済みでサービスエリアを拡大中だ。国内流通最大手のイオンは19年秋、英ネットスーパー運営会社、オカド(Ocado)と組み、AIを活用した大規模な配送センターを千葉市内に建設し、23年に事業を開始する。店舗を介さず倉庫から自宅に食品などを直送する。

(文=編集部)