地価が下がり、建築費も上昇に歯止めがかかるとなれば、新築マンションなど、住宅価格低下が期待されますが、ことはそう簡単ではありません。特に、新築マンションに関しては土地の仕入れから販売までには通常は1年程度かかり、大規模物件だと2年、3年かかります。つまり、地価が下がった段階で仕入れた土地の上の建つマンションの分譲が始まるのは、少なくとも1年先、2年先以降ということです。
残念ながら、21年早々の分譲価格の値下がりを期待することは難しいのが現実のようです。新築の値下がりを期待するなら22年以降ということになりそうです。しかも、首都圏の新築マンション市場では、マンション分譲大手7社のシェアが4割を超えています。経営基盤が強固なので、マンションが多少売れなくなっても、あわてて値下げする必要はありません。利益の出る価格に据え置いて、売れるまでジックリ待つだけの体力が備わっています。
大手不動産会社の影響力が大きく、人気の高い都心部やその周辺の価格は簡単には下がらないでしょう。
ですから、新築価格が下がるとすれば、郊外の中堅以下の不動産会社が分譲するマンションからということになります。それも21年というよりは、22年以降になるのかもしれません。それよりは、中古マンションなどの中古住宅価格の動きのほうが早いのではないでしょうか。
というのも、中古住宅の売主は基本的には個人の消費者です。大手不動産会社のように泰然と構えているわけにはいきません。転勤などの事情で売却や買い替えが必要になったときには、市場の動向とは関係なく一定期間内に売らなければならないのです。
現実の動きをみると、首都圏を中心にコロナ禍でも、20年後半の中古住宅市場は比較的堅調に推移しています。20年春には先行き不安から売り急ぐケースもあって成約価格は一時的に下がったのですが、後半には持ち直しています。
たとえば、東日本不動産流通機構の調査によると、首都圏の中古マンションの成約価格は20年6月から10月まで、5カ月連続して前年同月比5%以上の上昇となっています。
しかし、それがいつまでも続くとは限りません。コロナ禍がなかなか収束できないため、消費者の先行き不安は強まっています。住宅ローンの返済を行っている人たちのなかには、返済が苦しくなり、「このままではローン破綻に陥りかねない。そうなる前に売却したほうがいいのではないか」と考える人が増えているといわれます。収入減や先行き不安のなかで、売却を急ぐ人が増えてくれば、価格が下がる可能性が高まります。
一方、買い手が収入や先行きに自信を持てない状況が続けば、需要も鈍化します。市場に買い手が少なくなれば、それも価格低下の要因になるでしょう。そのため、先の全宅連の調査でも、中古マンションの価格は下がるとみる企業が多くなっています。図表4にあるように、20年10月段階の現状の見方でも、「上昇」の合計は7.8%で、「下落」の合計が28.3%と下落のほうが多くなっています。さらに、そこから3カ月先の21年1月見通しとしては、「下落」が大幅に増えて、4割近くに達しているのです。
こうした価格見通しのなかで、供給がどうなるのかといえば、先細り感は否めません。人口の減少が始まっており、やがて世帯数も減っていく上に、空家が増加しているのですから、新築住宅を求める人は減っていかざるを得ません。それに、コロナ禍が拍車をかけることなるでしょう。