三井不動産は11月27日、東京ドームに株式公開買い付け(TOB)を実施し、完全子会社化すると発表した。買収額は1205億円。全株取得後20%分を、読売巨人軍を傘下にもつ読売新聞グループ本社に譲渡し、連携を図る。
東京ドームは筆頭株主である香港のヘッジファンド、オアシス・マネジメントと対立が先鋭化しており、三井不が友好的な買収者(ホワイトナイト)として名乗りを上げた。東京ドームは同日、TOBへの賛同を表明した。TOB価格は1株1300円。26日の終値897円に約45%のプレミアム(上乗せ価格)をつけた。買い付け期間は11月30日から2021年1月18日まで。
11月27日の東京ドーム株は終日買い気配が続き、値幅制限の上限(150円高のストップ高水準)の前日比17%高の1047円で比例配分された。三井不も一時、3.2%高の2332.5円まで上昇した。東京ドームの大株主のみずほ銀行(第2位の株主)はTOBに応募する意向だ。
東京ドームは巨人軍の本拠地であるが、これまでは資本関係は希薄だった。読売新聞グループは東京ドームと資本業務提携を結び、球団経営と一体化させる。三井不と読売が連携してドーム周辺を再開発し、パ・リーグの球場で進んでいるボールパーク構想を推進する。
東京ドームは大株主のオアシスと経営方針をめぐって対立していた。オアシスは約2年前から東京ドームの経営陣に経営効率化を働きかけてきたうえに、今年1月に株式の保有比率を9.61%に引き上げた。2月に電子看板システムや命名権の導入、遊園地事業の改善策などを列挙した「より良い東京ドームへ」という経営改革案を公表した。「現在の保有比率は16.18%」(TOBに詳しいアナリスト)とみられている。
オアシスの主張を一言でいえば、人気球団の巨人軍のホーム球場という“お宝”といえる資産を有していながら「資産を十分運営できておらず、宝の持ち腐れ状態だ」(関係者)ということに尽きる。
19年のレギュラーシーズンの観客の総入場者数が300万人を超えたのは、セパ両球団のうち、ジャイアンツ(302万人)と阪神タイガース(309万人)のみ。それほど魅力的なコンテンツを抱えているのに、東京ドームは2020年1月期まで4期連続で営業利益率が低下している。「経営陣は経営努力をしているのか」と、オアシスは腹を立てているのである。
東京ドームは7月20日、スタジアムの改修計画を公表した。オアシスは10月16日、「長岡勤社長主導の改革は規模も小さく、ペースも遅い」と断じ、長岡社長と社外取締役の森信博氏(元みずほコーポレート銀行副頭取)、秋山智史氏(元富国生命保険社長・会長)の解任を提案した。
オアシス創業者で最高投資責任者(CIO)のセス・フィッシャー氏は10月22日、オンラインで記者会見を開いた。臨時株主総会で求めているのは、3人の解任のみで、新たな社長候補の提案はしていない。ブルームバーグ通信(10月22日付)は、会見の模様をこう報じた。
<フィッシャー氏は「次の経営陣を提案すると、そこに話が集中してしまう。今回はマネジメントの経営責任を問う議論をしたかった」と意図を説明した。(中略)来年の定時株主総会では豊富な経験で会社を先導できるような取締役を提案したいと述べた>
臨時株主総会は、あくまで前哨戦。来年の定時株主総会が本番。社長候補を立てて真っ向勝負で挑むと宣言したわけである。これを受け東京ドームは12月17日に臨時株主総会を開くことを決めた。長岡社長は「現在の経営体制が最善」と株主提案に反対した。