JAL、赤字額がANAの半分なのは、「公的資金注入」と「税負担軽減」の優遇が原因だ

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日本航空のボーイング777-300ER型機(「Wikipedia」より)

 日本航空(JAL)がコロナ後を見据えて先手を打った。11月6日、公募増資などで最大約1680億円を調達すると発表した。新型コロナウイルスで業績が悪化した大手企業が公募増資で資本を増強するのは初めて。燃費効率に優れた新型機購入など、需要回復後に備えた投資をする。

 11月18日、公募増資の発行価格が1916円に決まり、調達額が最大1826億円になりそうだと発表した。6日の終値に比べ18日の株価が7%値上がり、調達金額が当初想定より147億円増えた。株高の恩恵である。

 11月6日、オンラインで記者会見した木藤祐一郎財務部長は「財務的な余力があるうちに資金を調達して、ポストコロナを牽引する航空会社になりたい」と公募増資の狙いを語った。公募増資は国内外で実施する。国内が3分の2、海外が3分の1となる。最大で1億株を新たに発行、現在の発行済み株式数(3億3714万株)の3割に相当する。

 調達した資金のうち800億円をエアバスA350型機の購入に充てる。既存の主力機のボーイング777型機と入れ替える。二酸化炭素(CO2)の排出削減や燃費向上により収益を高める。A350は13年に31機を発注して、すでに6機を導入済み。羽田-福岡間など国内幹線に投入している。全席にモニター画面やUSB電源を備える快適性を追求した「日本の空を変える飛行機」(赤坂祐二社長)と自負している。今後は国際線にも投入していく。2023年3月末までの導入を予定している。

 コロナの収束後の観光需要を取り込むため、格安航空会社(LCC)事業の強化に150億円を充当する。50億円は完全子会社のジップエア・トーキョー(千葉県成田市)が使う航空機の改修費用に充てる。

 100億円はJALが50%出資するジェットスター・ジャパン(千葉県成田市)と、少額を出資している春秋航空日本(千葉県成田市)への投融資に使う。木藤氏は両社への出資比率を上げるかどうかについては明言を避けたが、「われわれのLCC戦略の一翼を担っていただきたいとの意味で(2社への)関与を深めていく」と述べた。

 北米路線など国際線の中長距離路線に注力するジップエア、国内線のジェットスター、中国路線に強みを持つ春秋航空日本と組み、成田空港を拠点にLCCネットワークを構築していく。ジェットスターの連結子会社化を視野に入れており、現在、ほぼゼロに近い連結売上高に占めるLCC事業の割合を引き上げる。

 700億円強は社債の返還や借入金の返済、航空機リースの返済用だ。21年3月期に300億円、22年同期と23年同期にそれぞれ500億円の資金が必要になるのを見越している。木藤氏は「増資により21年3月期末の自己資本比率は40%台を維持できる見通しだ」と説明した。公募増資は株式の22.9%の希薄化を招き、既存株主に負担を強いることにもなるが、「コロナ後に向けて企業価値を高め、既存株主にも報いていく」とした。

財務の健全性を保つ

 JALは10月30日、20年4~9月期の連結決算(国際会計基準)の発表にあわせ、未定としていた21年3月期通期の連結最終損益が2400億円~2700億円の赤字(前期は534億円の黒字)になりそうだと発表した。JALは前期まで日本会計基準を適用しており、単純比較はできないが、最終赤字は12年の再上場以来、初めてとなる。

 売上高に当たる売上収益は5300億円~6000億円(前期比62~57%減)を見込む。新型コロナウイルスの感染拡大を背景に国内線、国際線とも旅客収入の大幅な落ち込みが続く。そこで、一定の幅を持たせて、一部の需要回復を決算予想に織り込んだ。国内線の需要は政府の「Go Toトラベル」などを追い風に最悪期を脱しつつあるとみている。