20年4~6月期決算から、これまでの営業利益から投資損益の開示に変更した。営業利益には投資有価証券の売却による実現利益や投資先などからの配当金などは含まれない。SBGは戦略的投資持ち株会社である。営業利益は連結業績の適切な数値を表していないと判断した。
発表資料によると7~9月期(第2四半期)の投資損益は1兆504億円の黒字。前年同期は1兆4309億円の赤字だった。このうちビジョン・ファンドなどを運営するファンドからの投資損益は1兆401億円の黒字(前年同期は9437億円の赤字)。ファンド事業の税引き前利益は7844億円で4~6月期(第1四半期)の1296億円から大幅に増えた。
9月末時点でビジョン・ファンド1号は83銘柄を保有し、投資額の合計750億ドル(約7兆7300億円)に対し公正価値(時価と同義とされる)の合計は764億ドル(約7兆8600億円)。
ビジョン・ファンド2号は13銘柄を保有し、投資額26億ドル(約2670億円)に対して公正価値は76億ドル(約7820億円)となっている。ビジョン・ファンド2号では8月に米市場に上場した中国のオンライン不動産取引プラットフォーム企業、貝殻拭房(ベイク、KEホールディングス)の株価上昇で5366億円の利益を計上した。ファンド2号は昨年11月、ベイクに13億5000万ドルを出資した。
SBGは財務改善のために4.5兆円の資産売却を行うと3月に発表した。業績悪化やコロナ禍で株価が低迷したためだ。米携帯電話会社TモバイルUS株を約2.2兆円、国内の携帯電話会社ソフトバンク株を約1.5兆円で売却した。これまでに目標(4.5兆円)を上回る5.6兆円を資金化した。さらに、米半導体子会社の英アームの全株式を米半導体会社エヌビディアに4.2兆円で売却すると発表した。
この結果、残った保有株のなかでは中国のIT大手、アリババ集団株が6割超を占めることになった。3月末時点ではアリババ、TモバイルUS(旧スプリント)、ソフトバンクの3社の株式がポートフォリオの8割弱にのぼり、「投資会社として多様化は十分とはいえない」と格付け機関や投資家から指摘されていた。
資産売却を進めたことにより、ポートフォリオに占めるアリババの存在感はむしろ高まった。SBGが保有するアリババ株の時価は9月末時点で20兆円を超え、3月末時点の14兆円から4割以上増加した。アリババ株の比率は3月末時点で5割程度だったが、これが9月末には6割超を占めるまでになった。
アリババの浮沈がSBGの業績に大きな影響を与えかねない状態だ。孫会長も「アリババ一辺倒に偏りすぎているという指摘はまさに、その通り」と認めている。今後は米ニューヨークなどで上場株への投資を積極化し、投資先の分散を進める方針だ。9月末時点でアマゾン・ドットコムやフェイスブック、エヌビディアなどの現物株に投資し、合計公正価値(時価)は168億ドル(約1兆7300億円)となった。
SBGの株価はアリババ次第の様相を強めている。アントの上場が突然延期(その後、中止)になると、アリババ株は急落。東京株式市場のSBG株にも売りが波及した。SBGのアリババ離れはできるのだろうか。
ロイター通信によると、「SBGが新設した上場株の運用子会社、SBノーススター(登記はケイマン諸島)が、これまでに37億ドル(約3873億円)の投資損失を出した」という。米ハイテク株のデリバティブ(金融派生商品)で大きなポジションを持っており、「ナスダックのクジラ」(米大手証券会社のアナリスト)と評されている。公表された資料によると、アブダビを拠点とするアクシャイ・ナヘタ氏がSBノーススターの最高経営責任者(CEO)を務めている。
SBGの決算には外から見えにくい部分が大きいとされる。何が飛び出してくるかわからないことを常に頭に入れておく必要がありそうだ。
(文=編集部)