その記者会見は10月29日14時から東京の将棋会館で行われ、会見の様子はニコニコ生放送でも録画配信されたが、会見終了後の実際の配信まで時間がかかったことから、今か今かと待ちかねていた視聴者の不満が爆発。視聴者のコメントが動画上に流れるのがニコニコ生放送の特色だが、「もう2時過ぎたぞ」「いつまで待たせるんだ」「生放送しないのは誰の判断?」「ドワンゴは終わった」など辛辣なコメントが画面上を流れ続けた。
録画会見はなんとか15時から配信されたが、「第6期叡王戦の主催のほうは、株式会社不二家様にお願いをいたしました。また、ひふみ投信を運用するレオス・キャピタルワークス様、SBI証券様に特別協賛をいただくこととなりました。本当にありがとうございました」という日本将棋連盟の佐藤康光会長の冒頭の挨拶は、歯切れの悪いものだった。
第6期叡王戦の段位別予選が10月31日からスタートすることが決まっており、日本将棋連盟による新しい主催社、協賛スポンサー探しに加えて、ドワンゴに代わる放映先をどうするかなど、水面下での混乱をうかがわせる記者会見のようにも思われた。東京将棋記者会による質疑応答でも、事前に申し合わせでもあったのか、当たり障りのない質問ばかり。棋戦のネット配信、AIと棋士との対決等々、将棋界において新たな鉱脈を発見し多くのファンを生んだドワンゴに対するねぎらいの言葉ひとつ、出ることはなかったのである。
将棋界の内情に詳しい将棋ライターは次のように話す。
「ドワンゴの経営がよくなくて、1年くらい前からドワンゴの将棋中継関係のスタッフが、サイバーエージェントとテレビ朝日が共に運営するABEMAのほうに移ってしまっていたんですよ。ドワンゴを創業した川上量生社長は“将棋事業”にすごく力を入れていたんですが、昨年3月にドワンゴの取締役を退任した。そのことが与えた影響は大きかったと思います。金額は詳しくは知りませんが、毎年何億という金を連盟に出すわけで、それを維持するのが厳しかったようです。今回の撤退の詳細については、本当に秘密になってるようで、各新聞社も連盟の関係者もあまり知らなったようです。連盟とドワンゴのごく一部の幹部しか詳しいいきさつは知らないのではないでしょうか。表に出せないような会社の事情もあるんでしょうね。
ドワンゴは1年くらい前から、今後はタイトル戦の中継契約を結ばないと、主催する新聞社に通達していたそうです。新聞社の棋戦担当記者も、『契約しないということは、おそらくもうドワンゴは撤退するんだろうな』と言っていましたからね。今年も、ニコ生で中継したのは叡王戦だけ。それまではいろんな棋戦を中継してましたから、藤井二冠の対局が見たい人は、ドワンゴから相当ABEMAに流れたんじゃないですか。でも、将棋ファンのほとんどはニコ生には感謝してるし、『これまでありがとう』という気持ちだと思いますよ。人間とAIが闘う電王戦をやったりした功績は将棋界にとってものすごく大きいですからね」(将棋ライター)
「将棋連盟様といつから話し合いをしたのか、具体的なことは申し上げられませんが、それなりの期間は要しました。昨年から『ペコちゃん初めての将棋教室』を共済するなどお付き合いがありましたので、そのようなお付き合いの中で双方による話し合いで事が進んだという流れです」(不二家広報室)