フリーマーケット(フリマ)アプリ大手のメルカリは9月25日、第8回定時株主総会を東京都港区の六本木ヒルズ森タワー18階の本店会議室で開催した。臨時報告書によると、創業者である山田進太郎CEO(社長)は90.46%の賛成率で再任された。前年の賛成率70.97%より19.49ポイント高まった。昨年はかなりの株主からノーをつきつけられたが、今年は合格点がついた。業績が好転したことが好感された。
2020年6月期通期の売上高は前期比48%増の762億円、営業損益は193億円の赤字(前期は121億円の赤字)、最終損益は227億円の赤字(同137億円の赤字)。赤字幅は拡大した。上場後初の決算となった18年6月期から3期連続の最終赤字となった。
ただ、直近の第4四半期決算(20年4~6月)でみると、営業損益は9億8400万円の黒字(前年同期は61億円の赤字)に転換した。四半期ベースでの営業黒字は上場以来、初めて。売上高は60%増の229億円と大きく伸び、最終損益は5億6000万円の赤字(同64億円の赤字)と赤字幅は大幅に縮小した。
第4四半期は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、電子商取引(EC)が伸びた。リアルのイベントや広告宣伝費を抑制したことも採算の好転につながった。主力の国内フリマアプリの流通総額は40%増の1804億円。伸び率は1~3月期の23%から拡大した。米国フリマアプリの流通総額も2.8倍の2億8400万ドル(約300億円)に急増した。21年6月期の連結業績予想は、従来同様に公表しなかった。
グロース(事業規模の拡大)最優先で投資を継続する「勝負の年」だった。19年8月、山田CEOが決算説明会で宣言した通り、スマホ決済のメルペイや米国のフリマ事業に積極的に資金を使ったため、第3四半期(19年7月~20年3月)の連結決算の売上高は533億円(前年同期比43%増)に拡大したものの、最終損益は222億円の赤字(前年同期は73億円の赤字)に膨らんだ。
第3四半期の業績を踏まえ、20年6月期の連結最終損益は261~276億円の赤字になりそうだと公表した。ところが、蓋を開けてみると最終赤字は227億円にとどまった。第4四半期に営業損益段階では黒字に転換し、最終損益の赤字幅が縮小したからである。
新型コロナの影響が大きかった。外出自粛で家にいる時間が増え、メルカリに出品、あるいは購入してみようという人が増えた。過去に取引経験のあるユーザーが再びメルカリを利用する傾向も顕著になった。
米国ではロックダウン(都市封鎖)があったのに加え、アマゾンをはじめEC大手で生活必需品以外の商品配送が遅れ、エンタメ(娯楽)系の商品などの売買で、メルカリに現地消費者の目が向いた。
第4四半期は足を引っ張っていたメルペイと米国メルカリの2事業の赤字が縮小したのが大きかった。コロナ禍の第4四半期はメルペイの普及のための販売促進費と米国メルカリ事業のマーケティング費用や広告宣伝費用を圧縮した結果、同期間の営業損益は9億8400万円の黒字に転換した。第1四半期(19年7~9月)は70億円、第2四半期(10~12月)は68億円、第3四半期(20年1~3月)は63億円の営業赤字が続いていた。それが一転、営業黒字になった。想定していなかったコロナの影響がプラスに働いた。
今後とも営業黒字を続けることができるのか。カギを握るのは米国事業である。米国事業は山田CEOの肝いりで始まった。赤字が拡大しても、断続的に投資を続けてきた。中古品のマーケットプレイス(電子市場)として知られるイーベイや、個人間売買アプリの新しいビジネスモデルを開発したレットゴー、オファーアップといった強力なライバルが何社も存在している。