コンビニエンスストアの経営が転機期を迎えた。これまで右肩上がりの成長を続けてきたが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、コンビニ各社の明暗が鮮明になった。
コンビニ4社の9月の既存店売上高は、セブン-イレブン・ジャパンの独り勝ちだった。セブンは前年同月比2.4%増と2カ月連続で前年実績を上回った。新型コロナによって自宅で飲食する中食需要の高まりを受け、小分けのサラダやハイボールなどの酒類が好調だった。セブンは酒類の売り場を広げるなどの対策を取った。
一方、ファミリーマートは4.7%減、ローソンは5.5%減、ミニストップは3.8%減となった。ファミマは10カ月、ローソンは8カ月連続のマイナス成長だ。在宅勤務の増加で会社で朝食や昼食を買う機会が減った。
コンビニの成長神話を揺るがす出来事が相次いだのも、今年の大きな特徴だ。
ファミマの20年3~8月期の連結決算(国際会計基準)は、最終損益が107億円の赤字(前年同期は381億円の黒字)に転落した。同期間での最終赤字は初めて。新型コロナ感染拡大による収益の落ち込みを考慮し、不採算店を中心に244億円の減損損失を計上したことが響いた。売上高にあたる営業収益は前年同期比11.2%減の2356億円、本業のもうけ示す事業利益は30.5%減の321億円だった。21年2月期の連結業績は営業収益が前期比11.0%減の4600億円、事業利益は11.7%減の570億円、最終損益は37.8%増の600億円を見込む。
下半期(9月~21年2月期)に、台湾ファミリーマート株の一部を、ドン・キホーテやユニーを運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)に譲渡する。それに伴う再評価益500億円を見込む。これで上半期(3~8月期)の減損損失分を補填し、最終増益を確保する。
伊藤忠商事は8月25日、ファミマへのTOB(株式公開買い付け)が成立し、ファミマ株の保有比率を50.1%から65.7%に引き上げた。伊藤忠は完全子会社に向けた手続きを進め、10月22日の臨時株主総会の決議を経てファミマは11月12日に上場廃止となる。消費者との距離が近いコンビニが上場廃止になるのは、長い目で見てプラスなのだろうか。
伊藤忠はかねてから、ファミマや食品卸大手の日本アクセスなどグループ各社と連携し、商品在庫の圧縮や輸送コストの低減につなげる狙いを持っていた。ただ独立性が高いファミマとは温度差があった。「グループが一体となった迅速な意思決定ができない」との不満が伊藤忠で高まっていた。伊藤忠の商品供給網や人材ネットワークの活用を進めるというのだが、これは建て前論にすぎない。ここに新型コロナによる業績の落ち込みが重なり、ファミマを完全子会社にし、上場廃止へと一気に進んだ。
ファミマは2020年3月、販売不振にあえぐ店舗のテコ入れを図る「店舗再生本部」を新設した。フランチャイズ(FC)加盟店のオーナーが事業の継続を断念して、次のオーナーが見つからない場合、その店舗の経営を本部が引き継ぐ。経営を立て直したうえで、再びフランチャイズ化する。再建が難しいと判断した場合は閉店する。
コンビニ大手3社のなかで、ファミマはいち早く店舗数抑制に舵を切った。ファミマの総店舗数はサークルK・サンクスの買収によって単純合算で1万8000店規模になるはずだったが、20年9月末時点で1万6642店。ファミマと競合するサークルK・サンクスの店舗を閉鎖したことになる。