ファミマの澤田貴司社長は「コンビニ市場は飽和している」と述べている。今後も大きく店舗数を増やさない方針で、既存店の競争力を高めることに注力する。「店舗再生本部」は既存店の再生を担う。直営化して本部社員が運営するが、生活がかかる加盟店オ-ナーとは本気度が違う。直営店にしたら売り上げが増えるというのは幻想にすぎない。「(店舗再生本部は)FC店を直営にして閉店することを意図した店舗リストラを実行する部隊ではないか」(加盟店のオーナー)との疑心暗鬼が広がっている。
ミニストップはFC制度を大幅に見直す。現在は儲けのあるなしにかかわらず本部が加盟店から一定割合の経営指導料を徴収しているが、21年9月からは利益を両者で折半する仕組みに改める。
ミニストップをはじめ大手コンビニチェーンでは現在、加盟店の売上高から商品の仕入れ原価を引いた粗利益を本部と加盟店で分け合っている。売れ残りの廃棄ロスや人件費といった営業経費の多くは加盟店の負担となっている。加盟店で売り上げさえ立てば、本部の収入は増えるため、本部は店舗の経営状態にかかわらず一定の収益を確保できる仕組みになっている。
新たな契約では廃棄ロスや人件費など店舗運営にかかわるコストは本部と加盟店が共同で負担し、残った利益を原則として折半する。あわせて営業時間も自由に選べるようにする。ミニストップは、ほとんどのFC契約で24時間営業が原則となっていた。
公正取引委員会は9月2日、「加盟店に対する本部の優越的な振る舞い」をけん制する見解を示し、「24時間営業などを本部が強制すれば独占禁止法違反になり得る」とした。一部の加盟店からは廃棄ロスが増えるリスクを考えずに本部が加盟店に商品発注を求めたり、売り上げが増えていないにもかかわらず、人手不足でアルバイトの最低時給が上昇するため、加盟店の経営が苦しくなっている、と批判の声が上がっていた。
新しい仕組みで本部の収支はどうなるのか。本部は経営指導料が取れないので当然、利益は減る。ミニストップの21年2月期の連結決算は、売上総収入が前期比3.4%減の1869億円、営業損益は33億円の赤字、最終損益は39億円の赤字の見込み。新しい契約だと利益はさらに落ち込む。
その分、加盟店が潤うかというと、必ずしもそうではない。ミニストップの試算によると、1店舗の1日当たり平均売上高(日販)が40万円の場合、加盟店の手元に残る利益は今と変わらない。新しい契約では日販が多くなると加盟店の利益が増える仕組みで、日販が50万円の場合、加盟店の利益は今より15%上昇するとしている。
ミニストップの上半期(3~8月期)末の店舗数は1999店。平均日販は42.8万円。現状の水準では、制度が変わっても加盟店の利益は増えない。新しい契約で加盟店の利益を増やすためには、日販を大きく伸ばす必要がある。ミニストップの業績改善と加盟店の収益向上は、大手3社に負けない商品を出すことができるかどうかにかかっている。商品力のアップが不可欠だ。ミニストップのFC見直しは、店舗運営の負担を加盟店が担うという、これまでのコンビニのビジネスモデルが限界に来ていることを示している。
本部の責任を重くする動きがセブン、ファミマ、ローソンなど大手3社に広がるかどうかが、今後の焦点になるが、セブン&アイHDの井阪隆一社長、ファミマの澤田社長、ローソンの竹増貞信社長は決算発表の席上、「FC契約の見直しは考えていない」と異口同音に語った。コンビニの新しい仕組作りの壁は厚そうである。
(文=編集部)