Go Toトラベル、揺らぐ公平性…割引上限額が突然1万円も減額、大手事業者に予約集中

「Go To イベント」と「Go To 商店街」は博報堂DYHD系に委託

 経産省は所管の「Go Toイベント」の事務局を担う事業者に博報堂を選んだ。「Go To商店街」については読売広告社が幹事を務める、ひとまちみらい商店街振興コンソーシアム(共同企業体)が選定された。イベント事業は文化芸術やスポーツが対象。原則2000円を上限にチケット価格の2割相当分を割り引いたり、クーポンを付与したりする。事業費1200億円、委託費281億円である。

 商店街事業は各地の商店街に対し、観光商品の開発や催しに上限300万円を補助する。事業費は2003億円。委託費は51億円。経産省は両事業の事務委託先を公募し、第三者委員会の審査を受けて決定した。博報堂と読売広告社は共に博報堂DYホールディングス(HD)のグループ会社。経産省所管の2つのGo Toキャンペーンは博報堂DYHD系に委託されることになった。

Go To キャンペーンの大きなほころび

 Go To トラベルをめぐり、大手旅行予約サイトで割引額の減額が相次いだ。国内旅行代金の50%相当を、1人1泊2万円(日帰り1万円)を上限に補助する。50%のうち、35%分は旅行代金から割り引き、残る15%分は旅先での買い物や飲食に使える地域共通クーポン券を配る。

 楽天トラベルは10月9日までに利用条件を変更し、1会員に月1回(国内宿泊=1予約1部屋、国内ツアー=1予約)までという制限を設けた。宿泊予約サイト「Yahoo!トラベル」は10月10日午前0時以降の予約について、それまで最大1万4000円割引だった割引上限金額を1人1泊当たり最大3500円に引き下げた。「じゃらん」と「一休.com」も同日未明に、それぞれ割引上限額を最大3500円に改めた。

 観光庁はトラベル事業による恩恵が一部の事業者に偏らないようにするため、販売計画に応じて各社の予算枠を決定してきた。しかし、10月から東京発着旅行の追加やクーポンの配布開始で、大手サイトに予約が集中。予算が上限に達しそうになったため、各サイトは割引上限を引き下げた。

 赤羽一嘉国交相は10月13日、すべての旅行業者が最大35%分を割り引けるよう、追加で予算を配分すると発表した。今後、各社に割引額の上限を1万4000円にすることを徹底させる。すべての予約サイトは14日午前中までに元の割引額に戻した。

 事業は当初からつまずいた。東京都を急きょ対策から除外。事業者への周知期間は短く、現場は顧客の説明や月100件を超える運営事務局への書類提出に追われた。そのため、9月15日までの割引支援額(735億円)は予算額の約5%にすぎなかった。

 10月に東京が対象になると、今度は利用者が急増し、サイトが割引を制限する事態に急変した。政府は給付金の追加配分で解決を図る考えだが、予約の集中する大手と、中小との間で受け取れる給付金の差が広がる。公平性に欠け、潤っているところとそうでないところが二極化する結果を招いている。制度の不備が露呈した。

Go To イートでも制度設計ミス

 農水省は10月8日、Go To イートのポイントで得られる金額を下回る飲食ができないよう予約サイト事業者に求めた。昼食は500円、夜は1000円という付与額を下回る少額の飲食を抑えるのが狙い。安い料理を1品だけ注文して、ポイントの差額を得る利用者が相次いだのに対応した。

 鳥貴族ではサイト経由で予約して来店すれば、1人当たり1000円分のポイントを付与されるため、1品だけ注文して298円(税込み327円)を支払えば、差額の673円分のポイントが得られた。ポイントを稼ぐために、鳥貴族のチェーン店を回る“鳥貴族マラソン”という言葉まで生まれた。鳥貴族はグルメサイト経由の予約をコースに限定した。

 Go Toイートのポイント付与はオンラインの予約サイトを通じて予約するとポイントは次回以降の飲食で使える。1000円分のポイントで食事をしても、再び1000円分のポイントがもらえる。1人10回、1万円まではこれが繰り返すことができる。このためSNS上では“無限ループ”などという言葉が飛び交っている。

 農水省によると、10月1日の開始から2日間で115万人分、10億円相当のポイントが付与される予約があったという。獲得ポイントより少ない金額の商品を注文する利用客が出ることは予測できたはずだ。農水省官僚の想像力の欠如が背景にある。制度設計のミスである。

 Go To イート事業がグルメサイトを利するものになっていないかという疑問もある。外食店の支払いがいくらでも、グルメサイトの1人分の送客手数料は変わらない。「グルメサイトと外食店の利益は相反関係にある」という厳しい指摘もある。

(文=編集部)