JR東日本とJR西日本は、2021年3月期の連結最終損益が1987年の国鉄分割民営化以降で最大の赤字となる見通しだ。赤字額はJR東が4180億円(前期は1984億円の黒字)、JR西は2400億円(同893億円の黒字)。JR東が通期で赤字決算になるのは民営化後で初めて。JR西は1999年3月期以来22年ぶりのことだ。
両社はこれまで「新型コロナの影響を見通せない」として、業績予想の開示を見送っていた。夏季の輸送実績などを踏まえて発表した。両社とも「旅客需要の低迷は年末まで続き、回復し始めるのは年明けから」と想定した。JR東は年間の鉄道運賃収入は前期比43%減の1兆200億円、JR西が49%減の4350億円と見込んだ。駅ビルやホテルなど非鉄道事業を含めた売上高はJR東が35%減の1兆9300億円、JR西が39%減の9200億円とした。
両社とも単体の営業赤字額は減価償却費を1000億円以上も上回っており、キャッシュフロー面でも厳しい。年間配当はJR東が65円減の100円、JR西は82円50銭減の100円とする。
鉄道収入をみてみると、通勤・通学の定期収入と定期外収入(短距離・中長距離)に分かれる。JR東の定期外収入のうち中長距離営業収入は、コロナの影響が大きかった4月は前年同月比2%(98%減)、5月は5%(95%減)とほぼ全滅した。6月と7月は26%となったが、感染が再び広がり客足の戻りが鈍く8月は24%(76%減)にとどまった。定期収入と定期外収入を合わせた鉄道収入は21年3月期末時点で「コロナ流行前の75%の水準まで回復する」と想定している。
JR西の鉄道収入も同様。定期外収入のうち中長距離が不振。山陽新幹線は4月が前年同月比12%(88%減)、5月は11%、6月は32%、7月は38%。8月は25%に落ち込んだが、9月(1~22日)は39%に戻った。JR西は定期収入が80~90%、定期外収入のうち山陽新幹線と北陸新幹線は60%まで戻ると想定して見通しを立てた。
JR西は21年3月期の年間のコスト削減を、これまで計画していた500億円から700億円に拡大。設備投資は期初計画に比べ770億円削減する。JR東も21年3月期の営業コストと設備投資を当初計画から計1500億円減らす。「テレワークの定着や出張・観光客の落ち込みなど、新型コロナの影響は長びく」とみている。同社は22年3月期以降の鉄道収入を「コロナ前の8割程度」と予想している。JR西は訪日客への依存度が高い。訪日観光客は関西国際空港を拠点に、鉄道を利用して全国へ観光旅行に出かけるためだ。「コロナ以前の利用状況に戻るのは難しい」と、厳しい見立てをしている。
JR東、JR西が21年3月期の業績見通しを公表したのに対して、JR東海は業績予想を「未定」としたままだ。上半期(4~9月)の決算発表の際に通期見通しを発表するのだろうが、投資家は両社以上に「JR東海がどのような決算をするのか」に注目している。事実、新型コロナウイルス蔓延による外出自粛による鉄道利用客が激減した20年4~6月期の最終損益は、JR3社合計で3047億円の赤字(前年同期は2654億円の黒字)と過去最大の落ち込みを記録した。
なかでもJR東海の売上高は前年同期比73%減の1287億円と急降下した。JR東は55%減の3329億円、JR西も55%減の1633億円。最終赤字はJR東が1533億円の赤字(前年同期は915億円の黒字)、JR西が767億円の赤字(同425億円の黒字)、JR東海は726億円の赤字(同1313億円の黒字)だった。19年3月期に売上高純利益率が23%と抜群の高収益を誇ったJR東海の失速が際立っていた。