JR東海は、JR東やJR西と収益構造に大きな違いがある。20年3月期の実績でいえば、JR東とJR西の運輸収入は全収入の6割で、駅ビルやホテル、流通業の非鉄道事業の割合が4割と高い。対するJR東海は鉄道事業が8割弱を占める。鉄道収入にしてもJR東が首都圏、JR西が関西圏の定期収入という安定した収益源をもっているのに対して、JR東海は東海道新幹線の収入が全体の7割弱に達する。
東海道新幹線一本足打法が高収益を叩き出し、JR各社のなかで独走してきたわけだが、コロナ直撃を受け、最も大きな打撃を被った。東海道新幹線の「のぞみ」「ひかり」「こだま」の乗客数(東京発)は、緊急事態宣言が出ていたゴールデンウイーク(4月24日~5月6日)には昨年実績の6%(94%減)に落ち込んだ。お盆期間中(8月7日~8月17日)も24%(76%減)にすぎなかった。政府の観光支援策「Go To トラベル」の影響で旅行客は戻ってきた。東海道新幹線の客数は4連休を含む9月18~22日には昨年の52%にまで回復した。
「Go To トラベル」は10月1日から、ようやく東京発着が解禁になった。鉄道会社にとつて、東京解禁はインパクトの大きい施策だ。JR東海はかき入れ時である年末年始に新幹線の乗客が爆発的に増えることを期待している。はたして、思惑通りになるのだろうか。とはいえ、東海道新幹線に訪日観光客が大挙して戻ってくるのは先の話になる。
JR東海のもう1つの難問はリニア中央新幹線の開業延期である。リニアは2027年に東京(品川)-名古屋間で開業し、37年に大阪まで延伸する計画だった。総工費9兆円で、うち3兆円を政府の財政投融資で賄う。しかし、静岡県が大井川の流量減を懸念して、県内のトンネル工事の許可を出さなかったため、開業延期が事実上決まった。
アナリストは「延期中は年1000億円規模の利益圧迫要因になる」と試算している。主力の東海道新幹線がコロナ禍で大苦戦するなか、JR東海にはリニア開業の遅れの影響が重くのしかかってくる。
(文=編集部)