余談ですが、作者が点滴を受ける際、血管が詰まらないようにヘパリン(抗凝固薬)を含めた生理食塩水を点滴の管に流すと鼻に薬の匂いが突き抜けると訴えるエピソードがあります(第3巻、第30指腸『繋ぎ繋がれ…』、p88)。
作中では、看護師さんも作者の周りの方にも該当者がなく、“謎体質”として語られていますが、実は私も、診療の現場でそうした症状を患者さんから聞いたことがあります。ほとんどが若い患者さんからの訴えで、該当する薬は本作のようにヘパリンのこともあれば、別の薬のこともあり、正確な理由やどんな患者さんで見られるかまでは予想できません。血液内科の研修医時代、骨髄移植のとき(ドナーの細胞を患者さんに点滴するとき)にそういった訴えがよくあると聞いた覚えはあるのですが……。
どうか、作者の全優先生、そして、難病に立ち向かう患者さんたちがより元気に過ごせるよう、我々も力になれればと思います。
(文=Dr.Chem)
Dr.Chem(どくたー・ちぇむ)
ファーストガンダムと同じくらいの時期に生まれた、都内某病院勤務の現役医師。担当科は内科、オタク分野の担当科はアニメ、ゲームなど主に2次元方面。今回取り上げた『腸よ鼻よ』では、ちょいちょいいろんな分野からのパロディネタが挟み込まれていますが、特に作者が筋肉フェチなこともあってか、格闘マンガ、特に『バキ』ネタが多いです。ちょうどNetflixで『バキ』大擂台賽編が放送中にて、合わせて楽しんでます。