その一方、東京などでは維新の支持は広がっていない。先の都知事選で維新が擁立した小野泰輔候補は、供託金没収という大惨敗を喫した。そうしたことからも、大阪から離れれば維新人気はそれほどの力を持っていないことが窺える。衆院選で頼りになるのは、先の参院選で東京選挙区から当選した音喜多駿議員と、比例区当選で元都議の柳ヶ瀬裕文議員だが、衆院選を戦うには2人だけでは力が足りない。本来ならテレビに出まくって知名度を上げた大阪の吉村府知事の力を借りたいところだろうが、吉村知事は都知事選でも新型コロナ感染拡大を理由に東京へは応援に来なかった。
11月1日には大阪市を廃止するか否かを決める住民投票が予定されている。仮に衆院選の投開票日と住民投票が同日になれば、吉村知事が東京へ応援に行く余裕はなくなる。
「維新にとって、大阪都構想は一丁目一番地。前回の住民投票では勝つと思われながらも僅差で敗北した。今回、事前の情勢調査では賛成が優勢になっているが、それでも力を抜くことはできない。衆院選と同日になった場合、大阪以外の候補者は独力で戦わなければならず、かなり苦しいのではないか」(永田町関係者)
また、れいわの山本代表も大阪からの出馬に含みをもたせた発言をしている。もし、山本代表が大阪から出馬すれば、維新とガチンコバトルは避けられない。苦戦は必至だ。
7年8カ月にもおよんだ安倍政権が終わりを告げ、水面下で繰り広げられる衆院選の駆け引きが慌ただしくなってきた。
(文=小川裕夫/フリーランスライター)