菅義偉内閣、発足直後に衆院解散・総選挙ムード…野党混乱で自民党圧勝シナリオ

 安倍晋三首相の辞任表明により、自民党の次期総裁選が過熱している。9月8日、自民党は総裁選を告示。菅義偉官房長官、石破茂元幹事長、岸田文雄政調会長の3候補が出揃ったが、早くも5派閥から支持を取りつけた菅氏の勝利が確実視されている。そのため、永田町界隈の関心は、新総裁・新首相の誕生より、新政権発足後の動きに集まっている。なぜなら、菅内閣は発足してからすぐに衆議院解散・総選挙に打って出るとのムードが永田町では濃厚になっているからだ。

 そもそも菅政権は以前からワンポイントリリーフと囁かれてきた。なぜなら来年、衆議院は解散がなければ4年の任期満了を迎えるからだ。新政権は発足直後に支持率が高くなる。国民が高い期待感を抱いているうちに総選挙に打って出れば、多くの議席を確保できる。それが自民党の考える筋書きでもある。 

 そうした考えは、もちろん野党側も承知している。立憲民主党と国民民主党が合流して新党を立ち上げることで合意したのも、衆院選を見据えているからだ。一方、同じ野党でありながら新党とは一線を画しているのが、れいわ新選組だ。先の参議院選挙では、れいわ旋風ともいわれる大きなムーブメントを起こした。その勢いは都知事選にも引き継がれると思われたが、野党は統一候補として弁護士の宇都宮健児氏を擁立。れいわは足並みを揃えず、山本代表が出馬した。これで、野党共闘にヒビが入った。

 そして、これまでれいわを応援してきた野党支持層も距離を置き始め、参院選時と比べると明らかに熱量は落ちている。停滞感はあるものの、山本代表は次の衆院選を見据えて「小選挙区で100人の候補者を擁立する」と宣言していたが、供託金だけでも3億円が必要になる。選挙事務所や選挙カーなどの諸経費もかかる。100人を擁立するには莫大な選挙資金が必要で、財政的に厳しいという見方が強かった。

 また、山本代表は新型コロナ感染拡大の影響で公認候補の発表を見送っていた。有権者に候補者の顔を知ってもらい、名前を浸透させるには何よりも時間が必要になる。そのためには、できるだけ公認候補の選定作業を早めなければならない。そうした事情は山本代表も熟知しており、れいの公認候補の選定・発表を急いでいる。そして、9月4日には東京から2人、千葉から1人、大阪から1人の公認候補者を発表した。

 公認発表の記者会見では、山本代表は「仮に11月に選挙となれば、50人擁立が現実的」と以前に比べてトーンダウンしたが、それでも残りの期間で40人以上を擁立することになる。それは現実的には厳しい話ではあるが、山本代表は強気の姿勢を崩さない。

苦しい日本維新の会

 立憲民主党と国民民主党が合流する新党は、枝野幸男・立憲民主党首と泉健太・国民民主党政調会長が代表選に立候補した。どちらが代表に選出されても、代表選終了直後から公認候補選定が加速することは間違いない。しかし、旧立憲と旧国民で候補者が重複していた選挙区の調整は難しく、すんなり決まるのかは見通しが不透明のままだ。

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東京から2人、千葉から1人、大阪から1人の公認候補を発表したれいわ新選組の山本太郎代表

「ここで時間を食えば、選挙態勢が整わない。そのスキを突かれて自民党にやられてしまう」と旧国民民主関係者は危惧する。また、「自民党の総裁選に比べて、合流新党の代表選はいまいち盛り上がっていない。そのため、合流新党が埋没してしまう感もある。解散があるとしたら、かなり苦しい」とも明かす。

 合流新党より解散総選挙で苦しい立場に追い込まれるのが日本維新の会だ。大阪発の地域政党から国政政党にまで急成長した維新は、組織的にも地盤的にも大阪周辺で圧倒的な強さを誇る。吉村洋文大阪府知事のイソジン発言でミソをつけたと思われがちだが、「大阪に限ってみれば、維新の人気は衰えていない」(全国紙記者)というほど、支持は揺るがない。