発達障害をどう理解すればよいのか?障害者ではなく、独特のスタイルを持った別の「種族」

障害者ではなく、独特のスタイルを持った別の「種族」

――先生の本を読んで驚いたのが、発達障害の特性の「重複」という概念なんですが。

本田 実際の臨床では重複することはわかっているんですが、あまり一般向けには本などでも取り上げてはいませんね。そもそも以前の診断基準では、広汎性発達障害とADHDをカルテに一緒に書いてはいけないという約束があったのですが、実際にはこの重複がいちばん多くて、ややこしくなるんです。

 それが2013年に、広汎性発達障害を自閉スペクトラム症(ASD)と呼ぶようになって、両者の併記が可能になった。その結果、特性の重複が増えているわけです。木を見て森を見ないのか、森を見て木を見ないからなのか、まだ病名の分類ができていないのが現状ですね。

――本のサブタイトルにある「種族」というのはどういう意味ですか。

本田 バリエーションということを一般向けに種族と呼んだだけです。生物学的には何かの変異はあるわけですが、それだけでは病気とはならない。例えば血液型のAB型は人口の10%しかいないけれど、誰も別に病気だとは思っていませんよね。だから、発達障害の特徴というのは、その特徴があるだけで決定できるわけじゃなくて、その変異があることと社会環境との不和が起こったときに、障害となって現れてくるものなのです。多数派である普通の人たちは、発達障害のある少数派の人たちを、障害者ではなく、独特のスタイルを持った別の「種族」のようなものとして理解してほしい……そんな思いが込められています。

(構成=兜森 衛)