新型コロナウイルスによる株式市場の動揺で凍結していた新規株式公開(IPO)が6月24日、2カ月半ぶりに再開された。今春には上場承認を受けた18社が中止を決めたが、再承認を受けた企業は今のところ6社。上場銘柄の顏ぶれはIT(情報技術)や電子商取引(EC)など、コロナ後の産業構造の変化を先取りしたものが多い。
2010年代後半は年80~90社前後の新規上場が続いていた。19年の上場は前年より微減の86社。20年はコロナ禍で激減する。「50~70社にとどまる」というのが市場関係者の一致した見方だ。
リモート会議システムやオンライン診療が有望視されている。2000年前後のITバブルで多くのネット企業が淘汰される一方、アマゾンやグーグルといったITの巨人が誕生した。「新常態」を上手に掴む企業が上場にまで辿り着く、といわれている。
上場銘柄を手掛ける投資家は、規模が小さい案件に興味を示す。発行株数が少なければ、値段だけ飛ぶ確率が高くなるからだ。
成長期待と相まって、新興市場も高速の回転売買が盛んだ。6月に上場した6社は初値がついた日から1週間(5営業日)の売買高が、公開株数の平均11倍に膨らんだ。2~4月に上場した銘柄のそれは同5倍強、19年は約7倍だった。2カ月半の間「おあずけ」だったこともあって、個人の投機マネーが集まった。
6月24日以降の新規上場銘柄の公募価格と初値の倍率は下記の通りである。
【新規上場銘柄】
上場日 企業名 公募価格 初値 倍率
6月24日 フィーチャ 520円 4710円 9.0倍
6月24日 ロコガイド 2000円 4605円 2.3倍
6月24日 コパ・コーポレーション 2000円 4530円 2.2倍
6月26日 コマースOneホールディングス 1600円 6970円 4.3倍
6月29日 エブレン 1350円 5000円 3.7倍
6月30日 グッドパッチ 690円 2757円 4.0倍
7月7日 Branding Engineer 490円 2920円 5.9倍
7月10日 Speee 2880円 5150円 1.7倍
7月15日 KIYOラーニング 2300円 5360円 2.3倍
7月15日 アイキューブドシステムズ 3120円 9430円 3.0倍
7月15日 GMOフィナンシャルゲート 2540円 6550円 2.5倍
7月31日 日本情報クリエイト 1300円 2210円 1.7倍
7月31日 Sun Asterisk 700円 1209円 1.7倍
8月3日 モダリス 1200円 2520円 2.1倍
8月7日 ティアンドエス 2800円 7010円 2.5倍
(エブレンとSpeeeはJQ、他はマザーズ上場)
6月から7月上旬に上場した銘柄は、軒並み初値が公募価格の2倍以上をつけた。9.0倍に暴騰したフィーチャはディープラーニング(深層学習)と呼ばれる人工知能(AI)技術を使った画像認識ソフトを開発している。MaaS関連として注目を集めている会社だ。Maasは電車、バス、タクシー、カーシェア、自転車の路線検索、予約、支払いがアプリで一括利用できる。