デジタル家電専門店を展開するノジマの20年4~6月期決算の売上高は前年同期比18.0%減の1063億円と大幅な減収。一方、営業利益は64.6%増の60億円、純利益は49.0%増の44億円だった。携帯端末販売のキャリアショップ事業が振るわなかったことが減収の原因。改正電気通信事業法施行で通信契約の際の端末値引きが制限され携帯端末の販売が鈍化した。
特別給付金の支給で利幅の大きい高価格のパソコンの販売が伸び、営業増益となった。ノジマの店舗は神奈川県を中心に郊外の店が多い。新型コロナウイルスの感染拡大を受けた在宅勤務の浸透に伴い、消費者の自宅に近い郊外店でパソコンの売れ行きが好調だった。
ノジマはグループ会社にスルガ銀行をもつ。6月26日、シェアハウスなど投資用不動産をめぐる不正融資問題で経営の屋台骨が揺れるスルガ銀行を持分法適用会社にした。19年10月、スルガ銀行の株式を創業家の岡野一族から140億円で買い取り、すでに5%弱を保有していた分と、合わせて18.52%を保有する筆頭株主になった。6月26日に開催したスルガ銀行の株主総会でノジマの野島廣司社長が取締役に選任された。
ノジマはITと金融が融合したフィンテック事業に本格的に取り組む。スマホの普及やAI(人工知能)の進化に伴い金融機関以外の企業がフィンテックに参入。スマホ決済に代表される新たな金融サービスを提供する動きが急速に広がってきている。
ノジマは2015年、携帯端末販売大手のアイ・ティー・エックス(ITX)を約850億円、17年、インターネット専業のニフティを約250億円で買収した。あらゆる家電製品がインターネットを通じてつながるIoT(モノのインターネット)時代を見据え、大型M&Aを連発した。その延長線上にスルガ銀行の取り込みがある。
ノジマは2021年春から夏をめどに、昨年閉店した伊勢丹府中店(東京都府中市)が入居していたビルを大型商業施設(SC)として運営する。核テナントとしてノジマの旗艦店が出店するとともに、食品スーパーや衣料品店などを誘致する。商業施設を運営し収益力を高める。一連の動きはノジマが「脱家電」に経営の舵を切ったことを示している。
(文=編集部)