コロナ禍の影響による収入減で、住宅ローン返済が困難になっている人が増えている。「NPO法人住宅ローン問題支援ネット」の代表理事を務める高橋愛子さんのもとにも悲痛な相談が激増したという。
「住居確保給付金に関する情報を4月のブログで紹介したら、『住宅ローンにも使えるのか』という問い合わせが殺到しました」
住居確保給付金とは、離職・廃業して家賃が払えなくなった人を対象に一定期間給付される支援制度だが、コロナ禍の影響を踏まえ、休業によって収入が減った人にも拡大して適用されることになった。あくまで家賃に対する支援制度で住宅ローンには該当しないのだが、それだけ逼迫している人が多いのだろう。
「国としては家賃の支援はしても、やはり個人の資産になっていくものに税金を投じるのはなかなか難しいようです。住宅ローンの場合には今のところ、延命策を講じるしかありません」
相談が多いのは飲食業やエンタメ業界、自営業など。さらには、妻のパートとの合算で家計が成り立っている家庭では、コロナ禍でパートをクビになって住宅ローンの支払いに窮するケースもある。
年金生活に入った高齢者は直接的にはコロナ禍の影響を受けないのではないかと思いがちだが、「そんなことはありません。全世代に渡っています」と、高橋さんは語る。定年後も残った住宅ローンを支払うためには年金だけでは足らず、アルバイトをしている高齢者が少なくないからだ。そこにコロナ禍がやってくると、末端のアルバイトは真っ先に切られてしまう。
「ローン返済が苦しくなったら、まずは金融機関に相談をすることを勧めています」
金融庁が金融機関に向けて、住宅ローンの相談を柔軟に対応するように通達を出したことを受け、銀行では素早く対応できる態勢を整え、条件変更や返済猶予などに応じてくれているからだ。また、家計を見直して、通信費の節約、保険の見直しなど固定費を抑える工夫も必要だ。
逆に、住宅ローンの返済に困ったときにやってはいけないことがある。これはコロナ禍に限らないのだが、滞納すること、金融機関から催促の連絡が来ても無視すること、カードローンやキャッシングローンから借りること、この3つだという。金融機関の相談や条件変更に応じてもらえなくなる可能性が高くなるからだ。
実際、住宅ローンの返済に窮すると、目先のことしか見えなくなり、とりあえず急場を凌ぐためにカードローンを利用する人は少なくない。しかし、高金利であるため状況が好転するはずもなく、悪循環の泥沼にはまってしまう例も多い。
住宅ローンやカードローンの場合には督促が厳しいこともあり、それらの対応に必死になってしまう。その一方で、税金・国民健康保険料・年金保険料といった公的な支払いを後回しにしがちだ。
「でも、しばらく放っておくと、差し押さえになります。ほかの借金と違い、税金は裁判などの手続きをしなくてもサッと差し押さえてきます。税金は怖いですよ」
ただ、今は税金、国民年金保険料、国民健康保険料などはコロナの影響で収入が著しく減った人に向け、臨時特例措置として一定期間の減免に応じている。これらは申請する必要があるが、ほかにも特例の救済措置があるのか調べてみるといいだろう。
筆者は6月、コロナの影響で自宅を任意売却せざるを得なくなった人を取り上げたニュース番組を見て、大変なことになっていることを実感した。「その頃だとおそらく、もともと大変だった人がコロナでトドメを刺されたということだと思います」と高橋さんは語る。