しかし、コロナ禍さえなければ問題なく返済できていた人が破綻の危機にさらされているのが現状だ。
「本当の意味でコロナの影響が出るのは、これからかもしれません。秋冬くらいが心配ですね」
多くの売主を苦しめるのは、資産価値よりもローンの残高のほうが上回ってしまい、一般売却ができなくなるケースだ。最悪の場合には競売にかけられてしまうが、それを防ぐために、最近では任意売却という手法をとられることが増えてきた。
任意売却とは、不動産コンサルタントが仲介に入り、債権者・債務者の調整を行うことによって、資産価値がローン残高を下回っても売却が可能になる方法のこと。売却価格がかなり安くなる競売と違って市場価格に近い価格で売却できるので、債権者・債務者ともにメリットがある。ただ、売却代金がローン残高よりも高くなることはないので借金は残る。
場合によっては、リバースモーゲージ(自宅を担保にそこに住み続けながら融資を受けるシニア層向けのローン)や、セール&リースバック(現在所有している不動産をいったん売却して、その買主に賃料を支払い、居住を継続する仕組み)などという選択肢もあるのだが、個々人によって状況が違うために専門家の判断を仰ぐしかない。
任意売却することに決めているのなら、直接任意売却業者や不動産会社に相談に行けばいいのだろうが、そこまで決めかねている場合には、住宅ローン問題支援ネットのようなNPO法人や、住宅ローンに詳しいファイナンシャルプランナーだったら、中立的な立場で相談に応じてくれるだろう。
「どの相談先も同じようなアドバイスをしてくれるとは限らないので、2~3カ所まわってみて、どこが信頼できるかを見極めたほうがいいかもしれません」と、高橋さんは語る。
コロナが早く終息するのを願うばかりだが、ただ願っているだけでは始まらない。できるだけ早く銀行や専門家に相談するなど手を打つことで、傷を広げないで済むようにしたいものだ。
(文=林美保子/フリーライター)