5月8日に発表された2020年3月期の連結決算よれば、前期比27.1%増となる159億円の純利益を記録し、3期連続で過去最高を更新した。しかしカプコンは前述のヒットシリーズを擁しているものの、近年は新たな大ヒット作を生み出せてはおらず、むしろ売上高は18.4%減の815億円となっている。
どういった理由でこの現象が起きているのだろうか。そこで今回は、芝浦工業大学システム理工学部教授で、『日本デジタルゲーム産業史: ファミコン以前からスマホゲームまで』(人文書院刊)の著者でゲーム産業の専門家、小山友介氏にカプコンの好調の理由を聞いた。
まず、カプコンという会社の特長や好調の要因について小山氏はいう。
「カプコンという名前が社会全体に知られたのは、1991年にアーケード版として登場した『ストリートファイターII』からでしょう。一度経営が傾きかけたときに『ストII 』が出て、またその後もヒット作が出ずに苦しんでいたところに『モンスターハンター』が出て……といったかたちで、何年かに一度、大ヒットをドカンと飛ばしてきた会社です。
アーケードゲーム事業から始まった会社ではありますが、現在の中心は家庭用ゲーム事業がメインになっています。国内では圧倒的に『モンハン』が、世界的に見ると海外では『Resident Evil』という名前でリリースされている『バイオハザード』シリーズが、強力なタイトルになっています。
そして現在の好業績ですが、基本的にはダウンロード販売の好調が大きな要因でしょう。過去には、他のいくつかのゲーム会社についても、ダウンロード販売が利益を押し上げたと報道されていました。いわゆる機密保持契約があるので、ゲーム会社の取り分はわからないのですが、販売本数が同じでも、パッケージ販売に比べてダウンロード販売のほうが、利益率が高いのは確かなようです」(小山氏)
旧作ゲームのダウンロード販売はプログラムを少々更新するだけでよいため、利益率の高い旧作を安価に販売するという戦略で、好業績を上げているようだ。一方、小山氏によれば、カプコンが好業績を上げられた理由の背景には、現在のゲームユーザーたちの“保守化”も関係しているという。
「今の家庭用ゲーム市場では、シリーズ作ではない完全新作というのは非常に売れにくい状況なのです。『どうぶつの森』シリーズの好調が典型的ですが、ユーザーの趣味の傾向が少し保守的になっていて、完全新作は買わずに様子を見て、自分が好きなシリーズの続編を買うという人がとても多いんですね。ただほとんどの場合、シリーズ作も続編が出るたびにじわじわ販売本数が減っていきます。そういう意味では、家庭用ゲームはかなり厳しい時期にあるといえるでしょう。
ユーザーが保守的になっている理由の一つは、家庭用ゲーム機で遊ぶゲームユーザーの高齢化にあると思います。Nintendo Switchのヒットである程度子供層の新規開拓もできてはいますが、全体的にみると以前からゲームファンだった30代、40代といった大人ユーザーの比率が多いのです。そして、そういった大人ユーザーは『新しいものについていくのが難しい』という人も少なくないのでしょう。また、ユーザーの多くが社会人なので、長いプレイ時間が確保できないという事情もあるでしょう。今のゲームはかなりボリュームがあり時間がかかるので、そういった意味でも、安心して遊べるシリーズ作や旧作を求めるようになっているのではないでしょうか」(小山氏)