東急の大きな特徴は、不動産事業にシフトしている点にある。19年9月、東急株式会社が誕生した。旧東京急行電鉄から鉄道事業が切り離され、新・東急は不動産事業を今後の成長戦略の柱に据える。分社化された東急電鉄は東急の100%子会社である。
コロナの影響は鉄道とホテルの両面で現われた。東急電鉄の輸送人員は3月が22.4%減、4月が51.7%減。東急ホテルズの店舗売上高は3月が67.0%減で稼働率は26.2%、4月は売上高が91.1%減で稼働率は10.4%だった。
20年3月期決算で主役が入れ替わった。交通事業の営業利益は前期比23%減の270億円。不動産事業のそれは2%増の290億円となった。渋谷スクランブルスクエアや南町田グランベリーパークの開業で不動産賃貸事業の売り上げが伸びたことによる。ホテル・リゾート事業はコロナの影響で14億円の営業赤字に転落した。コロナの痛手を受けなかった不動産事業の利益が鉄道を上回った。
東急は“脱鉄道”を強める。今後は、グループの東急不動産HDと経営統合し、三井不動産、三菱地所、住友不動産の3強の一角に食い込むことを狙っている。
東武鉄道の20年1~3月期決算の営業収益は前年同期比7.9%減の1558億円、営業利益は47.4%減の92億円、純利益は66.8%減の39億円。首都圏の私鉄のなかで、唯一、最終黒字だった。
20年3月期通期決算の営業収益は前期比5.9%増の6538億円、営業利益は6.9%減の626億円、純利益は26.8%増の355億円。新型コロナの影響は営業利益ベースで運輸・レジャーで60億円の減益要因となった。
東武ストアを完全子会社にしたことでストア事業の営業収益が前期より404億円、営業利益が11億円増えた。これが1~3月期に唯一、最終黒字になった理由だ。東京スカイツリーは新型コロナ禍で臨時休業したため年間入場者数は360万人。前期より67万人減った。東武の株価は25日、一時、10円高の3710円をつけた。年初来高値4010円(1月15日)が視野に入ってきた。
私鉄各社は、政府の観光立国に呼応してホテル事業を強化してきた。しかも、コロナ禍で訪日外国人の増加を前提とした経営戦略の根本的な見直しを迫られることになる。コロナの影響が比較的少ないオフィスや商業施設など不動産事業にシフトすることになろう。
20年1~3月期に最終黒字を確保したのは東武鉄道のほか、名古屋鉄道、南海電気鉄道だった。
大手私鉄14社の1~3月期の連結業績と株価
売上高 最終損益 6月25日の終値(円)
東急 2962 ▲36 1533(33円安)
阪急阪神HD 1789 ▲41 3635(30円安)
近鉄GHD 2824 ▲108 4890(25円安)
小田急 1409 ▲17 2701(27円高)一時、2711(年初来高値)
京王 1036 ▲64 6280(10円高)
東武 1558 39 3690(10円安)
名鉄 1554 3.5 3050(変わらず)
京成 664 ▲34 3400(60円安)
京阪HD 701 ▲11 4810(30円安)
西武HD 1219 ▲321 1221(41円安)
京浜急行 735 ▲14 1703(8円安)
南海電 528 13 2488(6円高)
相鉄HD 607 ▲1.2 2893(10円高)
西鉄 1066 ▲2.5 2919(17円高)
(注)単位億円、▲は赤字。GHDはグループホールディングス、HDはホールディングス
(文=編集部)