東急、歴史的転換点…不動産事業の利益が鉄道を逆転、渋谷開発がコロナ減益を抑制

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渋谷スクランブルスクエア(「Wikipedia」より/Kakidai)

 都道府県境をまたぐ移動自粛制限が6月19日から解除されたことで、首都圏の鉄道株に動意がみられた。6月19日の終値は東急が前日比19円高の1611円、小田急電鉄が55円高の2659円をつけたほか、京王電鉄、京成電鉄、京浜急行、相鉄ホールディングス(HD)などが値上がりした。移動制限解除で運賃収入が回復するとの期待感が株価を押し上げた。

 小田急は一時、前日比82円(3.1%)の2686円まで上昇した。箱根観光に強みを持つ小田急にとって、夏の需要期を前に移動制限解除は好材料である。とはいっても、新型コロナの感染拡大で訪日観光客は全滅。コロナ前の旅客数に戻るには相当な時間がかかる。

西武HDの1~3月期の最終損益は321億円の赤字

 大手私鉄14社の2020年1~3月期の連結決算は、外出自粛や在宅勤務の広がりの影響を受け、14社中11社が最終赤字となった。レジャー目的の旅客が多い会社ほど収入減が目立つ。各社が強化してきたホテル事業でも稼働率が急低下した。

 赤字額が最も多かったのは西武ホールディングス(HD)。20年1~3月期の営業収益(売上高)は前年同期比15.5%減の1219億円、営業損益は26億円の赤字(19年1~3月期は145億円の黒字)、最終損益は321億円の赤字(同90億円の黒字)に転落した。

 新型コロナウイルスの影響は営業利益ベースで153億円の減益要因となった。ホテル・レジャー事業が115億円減。ホテルのキャンセルが相次いだほか横浜・八景島シーパラダイスなどのレジャー施設が営業を停止したことが利益を下押しした。鉄道などの都市交通事業でも営業利益は30億円減った。一部のゴルフ場やホテルで合計243億円の減損損失を計上した。20年3月期通期の営業収益(売上高)は前期比2.0%減の5545億円、営業利益は22.5%減の568億円、純利益は89.7%減の46億円だった。

 緊急事態宣言が発令された4月7日以降は鉄道・ホテルとも一段と落ち込んだ。鉄道輸送人員は3月が21.6%減、4月は48.7%減となった。ホテルの落ち込みが激しい。ホテルの宿泊者数は3月が67.3%減、4月が93.6%減。なかでも外国人の4月の宿泊数は99.8%減とほぼ全滅である。

 西武HDが他の私鉄と大きく異なるのは、ホテルのウエイトが高いことだ。20年3月期の実績でいえば、プリンスホテルなどホテル・レジャー事業の営業収益は2091億円。全体の営業収益(5545億円)の4割弱を占める。西武鉄道などの都市交通・沿線事業の営業収益1611億円を大きく上回る。外出自粛が解かれてもホテル・レジャー施設の利用客が戻るには時間がかかる。ホテル事業は外国人客をほぼゼロベースとして再構築しなればならない厳しい情況にある。

 6月19日の東京株式市場。首都圏の私鉄株が買われたなかで西武HDの株価は前日比7円安の1256円と好対照となった。主力であるホテル事業のコロナの打撃が大きいと投資家が認識しているためだ。

東急は鉄道とホテルの両方で打撃

 東急の2020年1~3月期の連結決算の営業収益は前年同期比1.9%減の2962億円、営業利益は83.6%減の26億円、最終損益は36億円の赤字(前年同期は110億円の黒字)だった。四半期ベースでの赤字は09年1~3月期以来11年ぶりのことだ。新型コロナの影響は営業利益ベースで約100億円の減益要因となった。ホテルが45億円、鉄道など運輸が40億円という。

 20年3月期通期の営業収益は前期比0.6%増の1兆1642億円、営業利益は16.1%減の687億円、純利益は26.7%減の423億円だった。21年3月期の連結業績予想は「未定」とした。